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    人材不足も原因に 過当競争で削られる「安全」

    2016年3月1日

     
     
     

     1月15日に長野県で発生したスキーバス事故は、バス業界だけでなくトラック業界にも衝撃を与え、もはや「対岸の火事」では済まされなくなっている。事故を起こしたバス会社は、国の基準を大幅に下回る安い運賃での仕事の受注、ずさんな管理体制や法令違反などが明らかとなった。公共交通に求められる安全は、過当競争のもとで削られてしまったのだろうか。「川下」だけに注目するのではなく、「川上」から「川下」まで一貫した処分が必要だ。
     この事故は、人材不足のため大型バスの運転に苦手意識を持ちながらも、訓練もほどほどに乗務せざるを得ない状況だったために起こったといわれている。大阪府内の事業者は「多少の時間とお金がかかっても、ドライバーを育成する体制を築くべきだ。人材不足を解消するために、不慣れであっても免許があるからと安易に運転を任せてしまうことはあってはならない」と話す。
     国交省が2010年度にバス会社119社を対象とした、バス運転者の年齢別割合調査によると、運転者のうち60歳以上が12.6%で、5年間で2.5ポイント上昇しているが、20代は3%しかいない。


     一方で、人材不足ではなく「規制緩和」を問題視する声も聞かれた。業界団体の会合では、「規制緩和のかけ声が勇ましく響いた2000年代、トラックもバスも事業者数が増え価格競争になってしまい、その結果、現在に至るまで悲惨な事故が続いている。また、過酷な労働環境をそのままにするのではなく、事業者だけでなく荷主にも改善を求めるような法を制定する必要がある」といった意見が出された。
     2012年の関越道で7人が亡くなったバス事故を受け、2014年に貸し切りバス事業において運賃・料金に関する公定基準の見直しが行われた。現在は、その新基準で運用が行われていたが、今回は基準運賃を下回る価格で契約されていたことが分かっている。事の重大性を見ると、今回のバス事故を踏まえ今後、行政が対策を打ち出し、処分や管理体制の強化を行うことが推測される。
     バス業界とトラック業界では運賃問題を除き、人材不足やドライバーの高齢化、規制緩和による過当競争など構造が酷似しており、運賃の基準ができれば教育に費用をかけられるほか、人材の確保(余剰人員)、長時間労働の是正といった労働環境も改善する。しかし、規制があっても今回のように基準を下回る運賃で受注できる構造、いわゆる「事故を起こさなければ分からない」というような仕組みでは意味がない。
     バス会社だけでなく、この流れでトラック業界も変わるのではと、淡い期待感が生まれている中で、「バスはエンドユーザー向け、レジャー向けのサービスが多いため、今後『基準を下回る運賃では受注しない』という流れが生まれるかもしれない。半面、トラック運送業は企業相手の仕事が多く、経済団体との関係もあるので、標準運賃の設定や荷主との関係改善は難しいのでは」という厳しい意見も聞かれた。
     トラック運送会社は荷主よりも立場が弱く、泣き寝入りするしかなかった。事故の裏に存在する「さまざまな要因」は、よっぽどのことがない限り改善されないだろう。実際に、滋賀県の事業者は「行政は安全を確保させることが仕事ではないのか。行政処分の強化だけでなく事故の背景にある本当の要因、荷主との健全な取引環境にも目を向けるべき」という指摘もあった。
     規制緩和後、公共交通となる業種でも過当競争が続いている。その結果、運賃競争に拍車がかかり、利益を生むため事業者は「何かを削る」ことは言うまでもない。公共交通の安全確保ができる法整備が求められる。

     
     
     
     
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