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物流ニュース
飲酒運転撲滅へ 事故を起こした人への教育は
2016年11月15日
兵庫県加古川市にある加古川刑務所。全国でも珍しい交通区(一般受刑者とは別に、交通事犯の受刑者を収容した区画のこと)があり、交通事犯の受刑者に対して専門的な教育を受けさせていることでも有名だ。一般的には、「交通刑務所」(定義されているわけではない)とも呼ばれている。今回、交通事故を起こした受刑者に対してどのような教育を実施しているのか、教育専門官の中島氏に教育内容と「飲酒運転を撲滅するために必要なこと」について話を聞いた。
昭和39年に交通事犯禁錮受刑者の集禁施設に指定され、同52年に交通区が完成した。現在、収容定員は1281人で、うち交通区は120人となっている。「なぜ、交通事故を起こしたかを考えさせることが大切」という中島専門官。「相手の立場に立って考えさせる。立ち直るきっかけを作ります」と話す。「交通事故をなぜ起こしたか、まずは外的引き金を考えます。それは友人であったり、居酒屋であったり、自宅であったりします。その次に内的引き金を考えます。これは自分自身の中に事故の原因を探します」
「認知・感情・行動について考えます。すると、交通事故を起こしたという行動を変えるためには、認知と感情、つまり考え方を変えなければいけないことがわかります」という中島専門官。「もちろん、受刑者一人ひとりに生活があって、原因もさまざまです。各個人に沿った指導が必要です」という。
飲酒運転による交通事故を考えるには、6人のグループで話し合うことから始める。職員や断酒の専門家などと一緒になって話し合う場を週1回、計12回実施するという。「これを実施することで、かなり考え方が変わります。酒に対する対処法を見つけて、コントロールする方法を学んでいきます」という中島専門官。
「ただし、この話し合いにはルールがあります。相手を尊重して秘密を守ること。そして相手を否定しないことです」と指摘する。「最初から本音は出ません。人間関係ができてこそ、自分の話をしようという気持ちになります。他の人の話に耳を傾けることで、自分以外の考え方を学ぶことができます」と話す。
「話し合いの回数が増えれば増えるほど受刑者が目に見えて変わります。自分の感想をどんどん出していくなど、発言の量が増えていきます」ともいう。「もちろん、酒をやめる・やめないは本人が決めることですので強制はしません。社会に出たとき、酒とどのように向き合っていくのか、自分自身で考えを出さなければいけない」とも中島専門官は話す。
また、「よく、『飲んだら乗らない』という言葉がありますが、普通はこれでいいのですが、アルコール依存症の人間には通用しません。依存症の人間が飲むと自分の意思では止まらなくなります。『一杯だけ』は通用しないのです」と指摘。「アルコール依存症は病気です。治療し続けないと再発してしまいます。自分が知らない間に依存症になっている場合もあります。インターネットでもチェックできますので、一度チェックしてみたほうがいいでしょう」と言う。飲酒運転で交通事故を起こす受刑者のうち、依存症の人間は少なくないという。
「飲酒運転を根絶させるためには、経験の浅いドライバーはもちろん、熟練のドライバーも研修を続けることが必要。アルコールに対する正しい知識を持つことが欠かせません。アルコールに対して一人ひとりが生活の中で問題のない付き合い方をすることが大事です。適量でおいしく飲めるような付き合い方が大切です」という中島専門官。加古川刑務所の交通区では食堂や、作業場などには施錠せず、受刑者は作業場などを自由に移動できる。面会も職員の立会いなしで実施されている。一部の受刑者は刑事施設の職員の同行なしに刑事施設以外の民間事業所に通勤して作業している。この記事へのコメント
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