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物流ニュース
北海道物流開発 斉藤博之会長 物流版LCC=「LCL」構想
2017年6月20日
広域分散化された地理的な条件の中で、生産・流通・消費するロットが少ない北海道。北海道物流開発(札幌市西区)の斉藤博之会長は、「物流の効率化を進め、地域全体の物流コストを下げていくことが地域経済の振興につながる。北海道が活性化すれば、物流業の利益向上や物流量の増加にもつながる」と考え、この実現のため、地方に集荷拠点を置き、トラックの帰り便を活用した共同配送の仕組みを企画した。
様々な機関と連携し、各種実証実験を通じてその有用性について検証。北海道における新しい物流のあり方を「LCL(Low Cost Logistics)」と提示している。
トラックドライバーの長時間労働の抑制や、積み下ろし先での待機時間抑制、高騰する車両価格など、物流業界は多くの問題を抱えている。そうした中で、「物流にLCC(Low Cost Carrier)ってどうだ」と考えた。
LCCが、なぜ安いのかというと、搭乗率と稼働率を上げて価格誘導を行っているから。物流でも同じ考えが適用できる。単に依頼されたモノを、その都度運ぶというよりも、積載率や稼働率を高める持続的な仕組みが構築できれば、地域の物流費を下げることができる。こういったことが可能と考え、実証実験を進めてきた。物流版のLCCで「LCL」。これは「単なる安売り」という意味ではなく、タクシーとバスの比喩で説明したい。
これまで北海道では、地方から消費地までのロットの小さい加工食品などの物流は、様々な物流事業者が個別に集荷先を訪問し、それぞれのセンターで保管・仕分をし、幹線輸送をかけた後、配送するという行程が一般的だった。その際、集荷や配送の時間指定ができ、ドアtoドアで行うきめの細かいサービスは、ユーザーにとっては当たり前だった。
しかし、少量多品種の商品を遠隔地に運ぶ環境では、このようなやり方は非効率な物流となり、コストは割高になる。宅配便などに代表される、このようなフルサービスを「タクシー型」とする。
2015年に行った実証実験の際、道内の食品関連企業を対象に「既存の配送状況」アンケートを行ったが、「自社・グループ企業」による年間の配送量は1社平均1143トンと76・0%を占め、「宅配事業者」による配送量は同じく186トンとわずか12.4%だったにもかかわらず、物流コストとしての支出は「自社・グループ企業」の支払い金額は1社平均約642万円と26.8%にとどまり、「宅配事業者」への支払い額は約1619万円と67.6%を占めた。このことから、道内での商品配送にあたって、タクシー型物流サービスのコストがいかに大きくなるかがわかる。
一方、これまで行った実証実験のように、地域内にあらかじめ集荷拠点を配置し、そこに商品を集めてロットを大きくし、拠点間を共同配送によって定時運行を行う形を効率的な物流のあり方として提示したい。集荷拠点をバスの停留所に見立てて、これを「路線バス型」の物流システムとする。
広域分散型社会である北海道では、高額なコスト負担を余儀なくされる物流が足かせとなって、地方からの小ロット産品の移出・輸出が進みにくい構造だったが、実証実験で検証した通り、「路線バス型」の物流システムでは、物流コストの大幅な低減が図れた。
北海道内にLCLの仕組みを持続可能な形で構築することができれば、生産者や企業は物流費の低減によって収益改善や販売増加につながり、ひいては雇用や所得の増加、新たな商品開発が可能となる。移出や輸出など新たな販路拡大にも目を向けられることになると考えている。
◎関連リンク→ 北海道物流開発株式会社この記事へのコメント
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