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物流ニュース
AEDなど社会貢献 業界のイメージアップ
2017年9月8日
数多くある業界のなかで、運送業界のイメージは残念ながら良いとはいえないのが現状だ。3Kのイメージが強く、昔のように働けば働くほど収入が得られるといった状況にないこともマイナスイメージとなっている。このような状況のなか、社会貢献に力を入れる事業者が増えている。社会貢献は地道な活動ではあるが、業界のイメージアップやドライバーの地位向上だけでなく、仕事に対して誇りを持つことにもつながると期待されている。
万一の事故遭遇時などで、被害者の救急救命に役立てる活動として、トラックにAED(自動対外式除細動器)を搭載する事業者が見られるようになってきた。藤倉運輸(藤倉泰徳社長、東京都足立区)では2015年から、AEDトラックを導入している。トラックドライバーを憧れの職業にするため、藤倉社長はドライバーのヒーロー化をテーマに掲げており、AEDの搭載を考えたきっかけは、ドライバーの安全と、年中街中を走っているトラックに搭載することで、AEDが必要な人に遭遇した場合、人命救助ができると考えたからだ。
そのうえ、駐車禁止の取り締まりが厳しくなってきたこともあり、藤倉社長には「トラックを、困った時のかけ込み寺のような存在にすることで、配送のための停車に理解を求める」という思いもあった。AEDを必要とする人が誰でも利用できるよう、車外の専用ボックスに搭載し、一目で搭載されているのがわかるようにラッピングを施している。
同社では、ドライバー全員に救命講習を受けさせ、災害時や事故などの現場に遭遇した場合に、迅速に救命活動が行える体制をとっている。AEDトラックも順次、増やしていく計画だ。
石橋梱包運輸(石橋正好社長、千葉県山武郡)では4月から社会貢献の一環として、年間20台のペースで保有する大型や4トンなど67台全てのトラックにAEDを搭載していく予定だ。所属する75人のドライバーは全員、救命講習を受けており、トラックにはAED搭載マークと普通救命講習修了ドライバーマークをラッピング。石橋社長は「ドライバーは全員AEDを操作できるので、必要な時は、いつでも声を掛けてもらいたい。業界全体が頼りにされるよう、他社も積極的に導入してもらいたい」と、業界のイメージアップにも期待している。
一方、社会貢献はもとより、新たなサービスを提供するため、全車両にAEDの搭載を進めているのが、軽貨物配送サービスを行うケイソー(伊藤淳社長、同柏市)だ。同社では、もしもの事態に遭遇した場合の救命処置に役立てようと、学校給食の配送車両3台と、スーパー「カスミ」が運営するネットスーパーの配送車両3台に、成人用と小児用AEDの搭載を開始。また、これまではイベント開催中に限っていたAED搭載車両の配備を、機材などの搬入から撤収まで配備期間を延長し、イベントをトータルでサポートする新たなサービスも開始。配送目的地に到着後、搭載車両はイベント会場で飲食物の冷凍冷蔵庫としても利用することができる。
新たなサービスについて伊藤社長は「多くの人が集まるイベント会場でAEDが多すぎるということはない。不測の事態への備えになるとともに、搭載車両も有効に使える」としている。同社では60台全ての車両に順次、AEDを搭載していく予定。あわせて搭載車両の普及に向けて、車両の外装に企業名やロゴマークを掲載してくれる協力企業を募集している。
このほか、社会貢献に力を入れる事業者もある。八信陸運(市川鉱治社長、東京都足立区)では、会社が立地する環境の問題で、地域住民から信頼と安心を得なければ事業を続けることが難しい状況だった。事務所と倉庫にトラックが数台入るスペースからなる同社の敷地の周りはかつて、一面の野原だった。時代とともに人口が増え、周りに住宅街が形成され、会社に通じる一車線の道路も通学路となった。
そのため、会社までの道路が3トン車以上進入禁止となり、車の出入りや敷地内作業に対する騒音の苦情など、事業を続けていくことが困難な状況になっていた。市川社長は「荷主さんとの距離感が付加価値であるため、この場から移動することもできず、地域住民に少しでも理解してもらえるように」と、社会貢献に力を入れている。震災時などの緊急避難場所として地域住民に活用してもらうため、倉庫に非常食を蓄えたり、日ごろから地域住民に声掛けするなど地域の安全に目を光らせるなど、会社への信頼とイメージアップを図っている。この記事へのコメント
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