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物流ニュース
建築資材輸送の課題 新築からリフォームへ移行
2017年9月4日
非製造産業を中心とした様々な業種が、労働力の確保に苦慮している。労働力に対する依存度が高いトラック業界や建築業界にとって極めて深刻な問題となっているが、即時改善は見込めないため、業務の効率化が課題となる。日本の総人口は、2008年の1億2808万人をピークに減少に転じており、少子化が進んでいる現時点では、人口回復が望めない状況にあり、限られた労働力で事業を運営していくためには、いかに効率化を図っていくかが重要となる。
●アナログ
開発が進められているトラックの自動運転などは、効率化を進める上で有効な手段であり、大いに期待できる。しかし、トラック運送業界の大半を中小・零細企業が担っているため、業界全体でみると即効性のある有効な解決策とはならない。
運送業界における非効率の要因の一つとして、いまだにアナログ的な作業が行われている部分も大きい。インターネットを使って業務の効率化を図ることで、人手不足や会社の収益性向上につなげるといった取り組みは効果を得る上で有効だと考えられる。ハードウェアの設計製造販売やアプリケーション開発を行っているHacobu(佐々木太郎代表取締役CEO、東京都港区)の坂田優取締役COOは「運送業界全体をオンラインで管理することができれば、かなりの部分で効率化が実現でき、業界全体の活性化にもつながる」としている。
このように効率化を進めることは、人手不足対策だけでなく、業界全体の活性化に必要不可欠な取り組みと考えられる。そうしたなか、少子化による人口減少の影響で需要の先細りが予想される住宅建築資材の運送事業者は、業界のなかでも、その対策が喫緊の課題となっている。
首都圏を中心に住宅建築資材を運んでいる東邦運輸(同東久留米市)では労働環境の整備に力を入れており、40代半ばから50代前半のドライバーが会社を支えている。彼らの活躍のお陰で毎年、5人の新卒を採用し、一人前になるまでにしっかりと技術や経験を積ませている。
毎日60台が稼働している立川営業所の尾辻勲常務は「新築は運ぶ量が以前に比べて少なくなっているので、件数でカバー。需要が拡大しているリフォームに力を入れている」とし、根津勇所長は「時間や労働力を有効活用するために、事務作業の効率化に取り組んでいる」として、事業の活性化に取り組んでいる。
国交省によると2018年以降、新設住宅着工数の減少が続くと考えられており、建築資材もいまより減少する可能性が高く、事業者再編などの可能性もあると予想されている。いまはまだ、新築の需要が勝っているが、今後はリフォームが主流になって、そのうち新築の需要と逆転することが想定されている。
●情報共有
運送業事業者にとってリフォームが問題なのは、新築に比べて運賃が安く、コストが合わないということだ。さらに、高層建築など建物によって資材の搬入が難しく、労力もかかることから、新たな配送方法も考えなくてはならない。
住宅建築資材を扱う事業者にとって、いまのところ新築需要がまだまだ大きいことは確かだが、既存の仕事をしっかりと取り込みながら、リフォームなど新たな需要を取り込むためには、事業者同士の連携強化も効率化を進める上で重要となる。
住宅建築資材運搬事業も宅配事業と同様に、中小・零細の小規模な事業者が最終的に支えている構造だ。需要の縮小など今後は厳しくなる環境に対応するためには、これまでとは違う新たな取り組みを行わなければ、発展の可能性も小さくなる。
鶴丸商事(埼玉県越谷市)の鶴丸雅章社長は、「事業者同士の横のつながりや協力関係がなければ、いろいろな需要があっても簡単に取り込むことができず、効率も悪い」とし、「情報を共有し、協力し合えるところは協力することで、効率化と仕事の安定を図ることができ、新たな仕事を展開することも可能になる」と考えている。
さらに、「これからは事業者がそれぞれ役割分担を決め、需要を取り込んでいくためのインフラを整えていく必要がある」としたうえで、「単なる運送屋ではなく、総合物流的な考えでやっていかなければ、この先難しくなって対応できなくなる」と、信頼できる協力相手を模索する必要性を訴えている。この記事へのコメント
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