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物流ニュース
怖くて注意できない? 妨害や嫌がらせで事故
2017年12月21日
常軌を逸したドライバーによる妨害運転で夫婦が亡くなった東名高速道路の衝撃は大きいが、一方では日常的に高速道路を走るトラックなどの職業ドライバーから「考えられなくない光景」というショッキングな声も聞かれる。同事故は6月に発生したが、逆ギレ運転者が逮捕されるなど、当時の状況が報道されて以降、似たような〝交通トラブル〟のニュースが続いている。これまで本紙でも同様の危険行為を取り上げてきたが、死亡事故に至っていないせいか社会的なインパクトは小さい。ただ、それらのトラブルが今回の死亡事故の後であったなら、間違いなく世間の受け止め方は違っただろう。
「文句をいうのではなく、ちょっと注意するのもダメ。ワケのわからないドライバーと関わらないのが一番」と神戸ナンバーのトラック運転者(65)。山陽道のSAで以前、大型車両用の駐車枠に止まっていたワンボックス車のドライバーに移動を促した際に「なんや、ケンカ売ってんのか?」と、話にならない経験をしたという。
同じく山陽道のSAで過日、駐車していた広島県のトレーラが出発しようとしたものの、前方を遮るようにワンボックス車が駐車。進路をあけてもらうためにクラクションを鳴らすと車は移動したが、そのまま後方を追走。トレーラが次のインターを出ると、追いかけてきたワンボックス車がトレーラの前に回って停車し、中から出てきた複数の男性が、手に持っていたバールのようなものでトレーラのフロントと助手席側のガラスを叩き割った。同社の社長によれば「人身事故ではないから、警察も真剣に動かないのではないか」と、いまも捜査に進展はないという。
SAで休んでいたトラックドライバーに話を聞くと、「SAで駐車スペースを巡って言い争いになるケースは耳にするが、それより厄介なのは走行中」という。そのドライバーは大型トラックに乗っており、「時速90キロしか出ないトラックで前方を走る遅い車両を追い越すには、目いっぱい加速しながら右側へ車線変更しないといけない。そうしないで右側へ移れば抜くにも抜けず、左車線を走る車両としばらく並走することになってしまう」と打ち明ける。
大型トラックに取り付けられたスピードリミッターの機能を知っていれば理解できそうな状況だが、そうした一連の動作を〝嫌がらせ〟と受け取る一般ドライバーも少なくないという。ようやく追い越したことで左車線へ戻ると、車間を詰めて後ろに張り付いていた乗用車が抜き去った直後、「急ハンドルでトラックの前方に割り込むような反撃を仕掛けてくる」という危険が日常の光景というから恐ろしい。しかも、こうした行為は残念ながらトラック同士でも起こるという。
その事故は平成27年9月30日の早朝、新名神から東名阪道を経由して名古屋市へ向かっていた岡山県のトレーラ(追い越し車線を走行)に対し、後方から迫って来た4トンのバン型トラックがパッシング。左側車線の少し前方には同じくトレーラが走っており、すぐに車線を変更できないトレーラの行動が待ち切れなかったのか、左車線へ移った4トン車はトレーラの真横に並んで幅寄せしたうえ、窓越しに手の中指1本を突き上げる仕草をした直後、岡山のトレーラの左前部に接触しながら強引に右車線へ割り込んだ。
新車から2運行目という段階でトレーラは大きく損傷したが、あわや大惨事という同事故はニュースになっていない。被害に遭った運送会社の役員によると「犯人探しは一向に進展しなかったが、途中から扱いを人身事故に切り替えたこともあってか4トン車を所有する運送会社と、当時のドライバーが判明した」という。信じられない話だが事故から数か月後、今度は同社の大型トラックがほぼ同じ状況の災難に見舞われており、物損扱いの事故の相手は現在もわからないままだ。
一つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在するというハインリッヒの法則に従えば、キレたドライバーによる危険行為の多さは計り知れない。9月末に兵庫県内の警察署で開かれた運転免許の更新時講習。「携帯電話の電源を切るか、マナーモードに」と前置きして1時間の講話を進めていた同日の講師役の男性が、あと10分ほどで終了という段階で1人の受講者を退場させた。スマートホンを操作していたようで、「免許の更新は継続のための形式的な手続きではない。安全運転に努め、事故を起こさないという強い意志を更新する場であることを再認識してほしい」と訴えた。この記事へのコメント
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