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物流ニュース
人材確保がさらに深刻化 国交省のルール改正案で…
2018年3月22日
労働力の確保に苦しむトラック運送業界に新たな懸念が生まれている。職業ドライバーの「長時間労働」「過労運転」を背景に、国交省が2月20日付で公示した2つのルール改正案により、「いま以上にハンドルの担い手がいなくなる可能性がある」(雑貨品を扱う60代後半のトラック経営者=広島市)と困惑する業界関係者が増加。兵庫県姫路市で機械製品などの配送を手掛ける50代の社長も「国は物流を止めたいのか。何がしたいのか理解できない」と憤りを隠さない。
先に国交省が示した2つの改正案。行政処分の強化と、もう一つは従来、「社長の私なら何時間でも働ける」との勘違いを生んできた解釈にダメ出しする輸送安全規則の明確化だ。
行政処分の強化(量定の引き上げ)そのものについては反発しないものの、根拠となる「違反行為」の内容にショックを受けるトラック経営者は少なくない。なかでも社会保険の未加入者が「1人で警告」「同2人で20日間の車両停止」「同3人以上で40日車」…という部分。また、人手不足で経営者が現場へ戻る小規模・零細事業者も増えているが、安全規則の改正によって社長自身も改善基準告示などに縛られる立場となる。
時短によってトラック1台当たりの運賃収入が減るなか、以前のように稼げなくなったドライバー職の魅力は薄れているのが実情だ。「子どもが生まれるとか、結婚が決まったので…という理由で退職するドライバーが出てきたのが残念」とこぼす経営者も目立つようになった。
そうした厳しい現状をカバーするため、業界に根付く「個人償却制」でドライバーをつなぎ止めるケースや、定年退職したドライバーを「アルバイト」として再雇用することで現場の人手不足を補う事業者も多い。しかし、これらの形態でトラックに乗務する労働者の場合は、社保未加入という例も珍しくないという。
「社保加入は償却制の廃止を意味するが、それでは間違いなくドライバーが辞めてしまう。そうかといって希望通りにすれば、会社が行政処分の対象になるというのだから、どうすればいいのかわからない」と、30年以上前から個人償却を採用してきたという岡山市の運送社長。「やり方次第で社保加入の償却制も不可能ではない」とアドバイスをくれる同業者もいるらしいが、深刻化するドライバー確保にタメ息が止まらない様子だ。
一方、「若手が来ない以上、年配者に頼らざるを得ない」(長距離定期便が主力の広島市の運送会社)と、定年退職したドライバーを半年や1年間の契約で雇い直す例も珍しくない。同社の社長によれば「65歳を超えて年金をもらいながら働き、自分で国民健康保険に加入しているアルバイト扱いのドライバーもいるが、今後は彼らも『社保未加入者』としてカウントされてしまうのか」と心配する。社内でアルバイトと呼ぶのは自由だが、法的には所定労働時間や同日数が社員の4分の3以上であれば同様に加入義務が発生するのは確かだ。
国交省が示す2つの改正案については電子メールなどでパブリックコメントが募集されているが、その期限は今月21日に迫っている。経験則からいえば、パブコメが募集される段階で「すでに決定していること」との認識があるせいか、これまでも多くの意見が寄せられるケースは少ないが、机上と現場とのギャップを埋めるには1つでも多くの声を届ける必要があることは間違いない。
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