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物流ニュース
運転者不足に拍車? 「睡眠不足の管理」施行で
2018年5月29日
「睡眠不足の乗務員を乗務させてはならないことなどを明確化し、点呼簿の記録事項として睡眠不足の状況を追加する」という、貨物自動車運送事業安全規則の一部改正が行われ、6月1日から施行される。これにより、事業者は、ドライバーの睡眠状況も日々管理しなければいけなくなる。事業者からは、「睡眠には個人差があり、管理には限界がある」と戸惑いの声が広がっているが、国交省では、「重大事故の原因になっていることから、睡眠時間の管理を追加した」と経緯を説明する。安全を考えると、やむなしとの声もあるが、度重なる管理体制の強化によって、ドライバー不足に拍車がかかる可能性も否定できない。
今回の改正では、事業者がドライバーを乗務させてはいけない事由として、睡眠不足が追加されることになり、その結果、事業者は、点呼時にドライバーの睡眠状況について報告を求め、確認を行わなければならなくなる。一方、ドライバーも、睡眠不足で安全な運転をすることができないなどのおそれがあるときは、その旨を申し出なければいけなくなる。いわばドライバーの睡眠状況の日々の把握が求められるのだ。
こうした対策強化に、「どれだけ睡眠をとれば大丈夫か、睡眠には個人差もある。何時間以上寝たら大丈夫などと明確な基準がない以上、管理は難しいのではないか」と話す事業者の声もある。また、「睡眠不足だと感じても、代わりがいなければ、仕事をしてもらうしかないのが実情」とし、「睡眠不足だから乗務禁止だとすれば、うちのような零細規模の事業者は、たちまち立ちいかなくなる」と話す事業者の声もあり、戸惑いが広がっている。
国交省では、今回の規則の改正について、「過去に発生した重大事故で、原因が居眠り運転だったことがあり、居眠り防止の何らかの対策が必要になった」(小田秀人自動車局安全政策課専門官)と経緯を説明する。睡眠時間の管理は難しいという点について、小田専門官は、「そういう声が届いているのも理解している」と話す一方、「大手などでは、ドライバーの睡眠時間を管理し、データとして管理しているところもある」と、すでに睡眠時間をしっかりと管理している事業者もあるという。
ただ、現実の問題として、ドライバー不足や荷主との関係もあり、睡眠不足を理由に会社側が乗務させないという対応ができるかとなると、中小・零細では、難しいのが実情でもある。国交省でも、そうした背景について把握しているが、小田専門官は、「居眠り運転が問題にならなければ規制は強化されなかった」とした上で、「管理が難しいことも理解するが、事故防止のためにも、常に睡眠状況の把握には努めてほしい」と話している。
アルコールチェッカーや健康管理、そして睡眠時間と、事業者はドライバーの管理体制の強化を迫られている。公共の道路を利用して仕事を行う以上、安全は至上命題であり、そのための管理は必要だ。例えば、居眠り運転の事故に巻き込まれた被害者やその遺族からすれば、会社がドライバーの睡眠状況を把握するのは当たり前との認識も理解はできる。ただ現在、業界では管理体制の強化ばかりが目立っており、今回の規則の改正によって、ドライバー不足の加速が指摘されている。
「管理されるのが嫌でドライバーになった人も多い」と指摘する業界関係者は、「現況下での管理体制強化の流れは、ドライバー不足を確実に加速させる」と警告する。「そもそも、プロドライバーといいながら、決してプロとは言えない安い給料で働かされている。都合のいい時だけプロというが、稼ぎをみると、プロの自覚など持てるレベルではない」とした上で、「プロの自覚を持てるだけの給料に引き上げないかぎり、現状の管理体制の強化は不十分な部分があり、ドライバーのなり手はさらに減っていくのではないか」と警鐘を鳴らしている。
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