-
物流ニュース
他人が生む残業時間 なぜトラックが解決?
2019年5月22日
自らが残業になる仕事を作っているわけではないトラック運送事業者に、国が残業を縮めるように求める光景は異様だ。受注先である荷主や、その荷主の得意先である小売店などの都合によって発生する時間ロスでありながら、残業のカウントはトラックに回ってくる始末。考えてみれば理不尽な話だが、そうかといって開き直って放っておけば今後、監督者である運送会社による〝長時間労働の黙認〟と判断されかねない流れも見え隠れする。このほど締め切られたパブリックコメントも、そうした方向へ向かうルール改正のように映る。
記録的な大雪によって数年前、鳥取県内の国道などで大量のトラックが立ち往生した際、ドライバーの労働時間の扱いを尋ねた運送経営者らに対し、労働行政官の「それも拘束時間に入るため、翌週以降に数日間かけて1日当たり2~3時間、労働時間を縮めるように調整してもらいたい」という返答に衝撃を受けた。事故や交通渋滞もそうだが、そんな偶発的な要素までトラック事業の管理現場が吸収しないといけないのか…と信じられなかったのだ。
化学製品や原料などを扱う岡山市の運送経営者は「我々は請負の商売であり、引き受けた運送業務を完了して対価である運賃がもらえる。『終業時間になったから、きょうはこの辺りでやめよう』という内勤やデスクワークではない。渋滞で労働時間の上限になったから、道路わきにトラックを止めてドライバーが帰宅してもいいのか。バカげている」と声を荒らげる。同社では数年かけて月間の時間外を100時間弱まで縮めてきたが、「あと20時間…どうやればいいのか」と頭を抱える。
日用品や建築資材の物流を手掛ける同市の社長も同様に、「労働は日本人の美徳。幸せになるために働き、働くことで人間は成長する」と休日を増やし、労働時間を縮めることばかりが是とされる働き方改革に異を唱える。「プレミアムフライデーにしても、今回の10連休、有休5日の取得義務化もそう。すべてが公務員ら一部の待遇改善にはなるが、彼らの休暇を支えるサービス業の労働者はどうなるのか。どうしてもカネが必要な人もいる。それでも働かず、休めというのは無茶すぎる」と憤りは収まらない。
過労死ラインとされる月間の時間外労働(80時間)でトラックドライバーがワーストに挙げられるが、その時間は実働をカウントしたものとはいえない。ただ、結果として昨年6月から、点呼時に睡眠状態のチェックを記録しなければならなくなった。ドライバーを子供扱いにするルールのように見えるが、施行前に用意された意見公募(パブリックコメント)に全国で16件の反応しかなかったのは残念だった。
3月20日から始まり、締め切られたパブリックコメントにも同様に少数の意見しか届いていないと予想されるが、またも労務管理を煩雑化させ、場合によっては長時間労働を黙認していると判断されかねない新しいルールが6月から始まる。先行している休憩・睡眠の地点や日時、荷待ち時間の記録に加え、集荷・配達地点でドライバーが作業した際の内容や時間、そうした現状を荷主が知る・知らないかを乗務記録に残すように求めるもので、長時間労働につながる問題をあぶり出そうという趣旨が透けて見える。
見方を変えれば、時短に向けてトラック事業者の尻を叩く格好かもしれない。かねてトラック関係者の多くが求めてきたのは、長距離と域内配送など運行内容の違いに応じ、何パターンかの時間規制を設ける労基法の改正だ。ただ、その道筋が見えない現状では、少なくとも「長時間の黙認」との指摘を受けることだけは避けなければならない。
この記事へのコメント
関連記事
-
-
-
-
「物流ニュース」の 月別記事一覧
-
「物流ニュース」の新着記事
-
物流メルマガ
工場や倉庫が各休憩時間をズラし、常に積込が行える状況であれば1日1時間程度は早める事ができるかも知れないね。
んで乗用車が高速で事故渋滞作って浮いた1時間がチャラになる。