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物流ニュース
「自動車運転」の有効求人倍率 大都市ほど高い傾向に
2019年6月20日
トラック運送業界が人手不足に陥っているのは、厚労省などが発表している有効求人倍率でも明らかだ。全産業平均の有効求人倍率が1.38に対して、自動車運転の職業(トラック・バス・タクシーを含む)は2.91。しかも、各都道府県で大きな違いがあり、大都市で、より有効求人倍率が高くなる傾向にあるようだ。業界内の有効求人倍率について調べた。
厚労省が発表した平成31年4月の有効求人倍率は1.38。これに対して自動車運転の職業は2.91。これは求職者1人に対して約3社が「うちで働いて欲しい」と手を挙げている計算となる。
有効求人倍率が高いことは、どういうことか、厚労省に話を聞くと、「事業者からすると人手が足らず、あまりいいとは言えない。しかし、求職者からすれば、1人に対して複数の会社を選べるという就職しやすい環境と言える」と説明。「しかし、一つの指標であって、倍率が高ければ事業者への支援対策をしなくてはいけないし、低い場合には求職者への支援対策をしなければならない。大切なことは一人ひとりが働きたい職場で働ける社会をめざすということ」と説明する。
大都市でも、地域によって有効求人倍率には大きな差が出ている。平成31年4月の場合、東京が4.13で、大阪3.83、愛知が5.65、北海道が1.89、福岡は2.66となっている。愛知が5.65と極端に高いが、愛知労働局に聞くと、「自動車運転を職業に希望する求職者が少ない。これは愛知県だけが特別ではないが、同県は特に製造業が強く、求職者が製造業を求めた場合、相対的に運送業を求める人が少なくなるということは考えられる。いままで他県と比較をしたことがないので、愛知県が特に高いとは思っていなかった」と説明する。
また、求職者が職業訓練を受ける際、物流に関するものがないということもある。都立職業能力開発センターの訓練科目を見ると、機械関係や建築・造園関係などが目立ち、物流関係は見当たらない。東京都産業労働局に聞くと、「求職者のニーズを調査して改廃している」という。「もともと物流関係のものもあったが、モノづくり系は直営、それ以外は民間へ移行していった」という。「国際物流に関する課程を設置する提案があり、これも民間に任せている。民間の営業を妨げないようにするため」とも話している。
求職者からすれば、職業訓練で学んだ業界に進むのは当然の流れとも言えるが、訓練課程のある「建設の職業」の有効求人倍率は4.70。「介護サービスの職業」についても3.94と高い数字となっている。
有効求人倍率が高いということは、それだけ人手不足で苦しんでいるということ。それだけ景気が回復しているとも考えることができる。また、人手不足を背景に物流費が上昇していることも事実だ。あとは、どれだけ効率的な輸送を実施して、人手のかからない輸送ができるかにかかっている。
運送事業者のネックは「効率的な輸送方法」を考えても、それを荷主が認めなければ実行できないという点にある。運送事業者は輸送のプロであるだけに、どうすれば効率的に輸送できるかを常に考えるが、それを荷主に提案して認めさせることが難しい。非効率だとわかっていても、荷主の指示に従っていることが多い。
いくら共同配送を提案しても、荷主が首をタテに振らなければ、そこから先には進まない。しかし、少しずつだが荷主も運送業界の人手不足を認識し始めてきている。運送事業者の多くは「どうせダメだ」と考えて交渉の要求すらしていないことが多い。運賃交渉さえしていないという事業者が半数以上を占めている。あきらめずに交渉して欲しい。
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