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物流ニュース
ドライバーの需要と供給 人手不足の取り組みを聞く
2020年2月6日
ネット通販の拡大による宅配の増加や、引越繁忙期における引越難民の増加など、物流業界における人手不足の増加が慢性化して久しい。しかし、人手不足の問題は物流業界に限ったことではなく、建設業界や介護、IT業界でも悩みの種となっている。半面、運送事業者の中にも人手不足に悩まされない企業もある。その差は地域性なのか、取り組みの違いなのか。今回は「人手不足」について調べた。
東京都労働局によると、産業別の求人数で運輸業・郵便業は、令和元年10月が4056人(前年同月比10.4%減)、同11月は3905人(同15.1%減)と減少傾向にある。昨年4月からは、5か月連続して減少している。
埼玉労働局によると、令和元年10月の運輸業・郵便業の求人数は2948人(同12.9%減)、同11月は2630人(同6.2%減)となっている。神奈川労働局でも、同10月の同業の求人数は3281人(同16.8%減)、同11月は2031人(同16.8%減)。千葉労働局では、同業の求人数は同10月が2242人(同7.2%増)。同11月は1632人(同16.8%減)となっている。
厚生労働省では、「11月の求人数は全体的に6.7%の減少となっており、産業別で運輸業・郵便業は6.7%の減少。製造業、サービス業、卸売業・小売業、学術専門・技術サービス業でも求人数は減少している」という。また、有効求人倍率をみると、「東京都の2.06倍が最も高くなっており、最低だったのは長崎県の1.16倍」と、地域的にも差が出てきている。
全国の新規求人倍率は平成28年に2.08倍となり、同29年に2.29倍、同30年に2.42倍となったが、数字的には「人手不足」には歯止めがかかってきている様子だ。
カンダコーポレーション(原島藤壽会長、吉田稔社長、東京都千代田区)を中核とする物流の総合商社、カンダグループでは、安定した経営基盤を基に、長く勤めてもらえるように、効率的かつ意欲的に働ける職場づくりに力を入れているという。労働力については以前から、既存の仕事に支障が出ないように「間に合わせている」という状況で、新たな仕事の依頼があっても、人の確保が難しいため、「お断りせざるを得ない場合もある」としている。
利用者の期待に応え、高いレベルで品質を維持していくために、同グループでは昨年、新本社ビルの完成を機に新卒採用の専門部署を設置。グループ全体で採用の強化を進めている。
インフラ関連の工事・輸送・商事などの事業を展開している浅井(浅井隆社長、同大田区)では、長年培ってきた専門の技術・専門の知識を蓄積していく、働きやすくて、風通しの良い職場環境づくりを行っている。労働力について、現状は不足しているという。「特に大型やトレーラなど、技術を必要とするドライバーの採用は簡単ではない。オリンピックなどの開発が終わって落ち着いてきたが、仕事のボリュームは安定している。労働力の確保が難しい状況で、いただいている既存の仕事を維持していくためにも、バランス良く採用を行っていかなければならない」としている。ネットでの求人を行うとともに、紹介による採用に力を入れていく考えだ。
桶本興業(桶本毅社長、埼玉県さいたま市)の担当者は「ドライバー不足を感じる部分がある」とコメント。同社には、2トンドライバーなどにエントリーが寄せられていることはある一方、大型ドライバーは比較的少ない。同担当者は、「ドライバーの高齢化が進み、世代交代を考える必要性を感じている。しかし、若い大型ドライバーなどはすぐに見つからないのが現状」としている。
西武通運(埼玉県狭山市)の鳥居伸雄社長は「現在、当社では、ドライバー不足は感じられていない」としている。続けて、「採用担当者が、これまでに工夫を重ね続けてくれた結果では」とも話している。
角田運送(千葉県市川市)の角田正一社長も、自社内で「ドライバー不足を感じることはない」と答えてくれた。また、そう感じる大きな理由に同社のドライバーの定着率の高さを挙げている。角田社長によれば、20年以上続いているドライバーが半数近く存在し、おかげで新しく募集する必要性も低いとのことだ。
啓和運輸(川島満社長、埼玉県入間市)の担当者も、「会社全体で見て、ドライバー不足感を感じることは少ない」としている。しかし一方で、「現在の人手不足や人材の流動、お客様のご要望にお応えするための業務拡大を考えると、引き続きドライバー募集を続ける必要性を感じている」とも分析している。同担当者が求人活動の中で注目しているのは福利厚生で、特にドライバー本人の家庭に重点を置いている。同担当者は「他社と比較した中で、当社を選んでいただけるような福利厚生が必要だと感じている。家族のいるドライバーが魅力を感じるようなものを提供したい」としている。
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