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射界
2016年9月26日号 射界
2016年9月30日
悲しければ涙を流し、嬉しかったら笑って喜びを分かち合う。こんなに感情を素直に表現できる動物は人間以外にはない。確かに喜怒哀楽を表す動物もいるというが、それは飼い主の欲目。パスカルの言葉を借りれば、人は「考えるために生まれてきている。従って考えることなしには一瞬たりともいられない」と記す。
▲パスカルと言えば『随想録』が有名。ここから引用される有名な言葉が「人間は自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない。だがそれは考える葦だ」の一節である。西欧的で聖書の影響を強く受けた表現ではあるが、人間を理解するうえで最も適した言葉として今なお、色んな機会に引用される。別の学者は「人間だけが赤面できる動物である」とも書いているが、これまた含蓄のある言葉だ。▲だが、すべての人が「考える葦」であるとは言えない。特定の一部の人間とは言え、快楽と引き換えに不幸を手にする愚行に走って糾弾される。名門の出であるとか高学歴などは関係ない。その人の素質の問題であるが、中国の老子は「強い人間になりたければ水になれ」と説いている。四角い器に水を入れると四角になり、円い器に入れれば円くなる。この言葉を謙虚に受け止めたい。
▲人はとかく、自分を身の丈以上に見せたがる傾向がある。ロシアの文豪ドストエフスキーは「失敗したら歯を食いしばって我慢しなさい。成功しても有頂天にならないことだ」と書いている。人間の弱さを鋭く指摘した言葉として常に反芻したい。モノに恵まれた生活が幸いと信じる人も数多いが、精神的に貧しければ幸いとは言えない。この点をしっかり考えられる人でありたい。
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