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白紙の見積書に困惑、経験とプロ意識で対抗
2010年11月9日
景気の影響か、荷物が動いていない状態に苦悩する物流会社も少なくないようだ。重量物を運んでいる関東の事業者は、「いまは仕事の取り合いで運賃競争になる」と話す。特に困るのは白紙請求書で荷主獲得に来る物流事業者だという。これに立ち向かえたのは、社長の経験とプロ意識だった。
同業者との運賃ダンピング競争に悩まされている同事業者。「仕事を取るために、荷主に白紙の請求書を持っていって運賃を書かせる事業者もいる。好きな金額を書いて運賃を決めてくれと荷主にいう営業だ。荷主の言い値でいいという白紙の請求書にはかなわない」と嘆く。白紙の請求書は、コストや安全、環境などを考えてはできない営業手法だが、「運賃が安くても仕事が取れればいい」という発想からなされているようだ。同事業者は「物量が動けばいいが、今の経済情勢では運賃ダンピングが止まらない。当社は重量物の中でも特殊な輸送なので、値段はあってないような状態」という。
奪い合いに勝ち抜くため、営業にも力を入れている。これまで、社長自ら積み込みの現場に立ち会うなどして荷主の信頼を築いてきた。だが「今はそれが通用しなくなった」。
以前は「社長が現場を回っていて、責任感の強い会社だ」と見られ、社長への信頼と仕事の質への評価で荷主を獲得できた。今は運賃だけで評価されてしまうという。
運賃ダンピングによる荷主の奪い合いに振り回される同事業者だが、輸送と作業品質にはこだわり続けた。その中で、こんなことがあった。重量物の玉掛け作業で、ワイヤロープの安全荷重の認識が、積み込み先の作業員と同事業者とで違っていたのだ。
同事業者が用意したワイヤロープでは積めない、と作業を中断されてしまった。現場に出向いた社長は「責任はこちらで持つからやってくれ」と、作業続行を渋る作業員を説得し、積み込んで輸送した。
その後、クレーン協会にも確認すると、社長の見解が正しかったことが証明された。積み込み先の作業員も玉掛け講習やクレーン免許などは受けているはずだが、知らなかったという。
後日、積み込み先の社長から電話があった時に、このことを伝えたところ、「今後もよろしく頼む」と評価された同事業者。「運賃だけではないことが伝わったのではないか」と喜び、「正しい作業知識と技術を持っているから仕事が来るのだ」と社内で話し合い、さらに努力を重ねることを誓った。(千葉由之)
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