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法令順守に悩む配車マン 板挟みに「辞めたい」
2012年4月2日
会社からは効率のいい配車や売り上げ増を求められ、ドライバーからは稼げる仕事を求められる。さらに行政からはコンプライアンスを求められる。法律を犯せば運行管理資格を剥奪され、悪質と判断されれば、司法の場で責任を追及される。年々、取り巻く環境が厳しさを増している配車マン。そこには、日々苦しみ悩む姿がある。
埼玉県内の事業者は先日、配車マンから配車を辞めたいとの相談を受けたという。その配車マンは、社長が自分の右腕と考える有能な人材で、昨年トラックから下ろし、配車に引き上げた。ドライバーとしてもてきぱきと仕事をこなし、ほかのドライバーの模範とも言える存在で、信頼も厚かった。「配車を任せるなら、この人物しかいない」と考えた人事だった。それだけに配車を辞めたいと言ってきたときは、社長も驚きを隠せなかったという。運賃水準が下がっている今、利益を出すには、いかに効率のいい配車を組むかが求められる。同社の配車マンも当然、それを理解しており、空車をなくす努力を怠っていなかった。日々、効率のいい配車を手掛けていた。
売り上げも悪くはなく、社長もその仕事ぶりには満足していたという。しかし、徐々に様子が変わってきた。イライラすることが多くなり、ドライバーと衝突することも次第に増えていったという。
問題は、コンプライアンスの徹底を図ったことにあり、特に労働時間の問題が大きかった。同社では稼ぎたいと考えるドライバーがほとんどで、これまでは労働時間を考えずに仕事の割り振りを行うことができた。だが、労働時間に制約がかかったことで簡単に配車が組めなくなった。時間を守ればドライバーの賃金は下がり、反発の声が上がる。
社会的規制が強化されていることは、ドライバーらも理解していないわけではなかった。社長も何度も説明していたという。しかし、自分の給料が下がるという現実的な問題に直面すると納得できることではなかったようだ。「労働時間を守った上で、効率のいい配車を組んで利益を上げなければならない」。会社を守るためにはドライバーの反発には耳を貸せない。過度のプレッシャーが襲っていた。「ドライバーの気持ちが分かるだけに、彼らの声に耳を貸せない自分が辛かったのだろう」と社長は話す。売り上げアップとコンプライアンスの徹底、反発するドライバーの板ばさみに悩み、配車を辞めたいという決断に至ったという。
その後、社長自らが配車を手伝うことで負担を軽減させ、配車マンには気分転換の意味も込めドライバーとしてトラックに乗る日を設けたという。(高田直樹)
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