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「調整区域」で営業 認可求める声が高まる
2012年5月23日
周囲に何もなかった頃に運送業を始めたが、その後、徐々に住宅が立ち並ぶと、「うるさい」「危ない」などと苦情が入るようになり、他へ追いやられる事業者がいるとよく耳にする。特に都市部でその傾向が強いが、その結果、住宅が建たず苦情の少ない市街化調整区域へ進出する事業者は少なくない。しかし、調整区域は一部路線業者を除き営業所として正式に認められていない。苦肉の策として、移動可能なトレーラハウスでの営業所認可を受けるケースも出てきたが、地域に温度差もあるのが実情だ。これまでも調整区域での営業所認可を求める声が業界であがっていたが、コンプライアンスの徹底が一層求められるようになった今、その声はさらに強くなってきている。
「住民の苦情でどんどん追いやられ、調整区域で営業せざるを得なくなった」とこぼす埼玉県の事業者。同社はもともと都市部で事業を展開していた。開業した当時は周囲に住宅もなく、のどかな田園風景だったという。その後、時代とともに都市化が進み、周囲にも住宅が立ち並ぶようになった。すると、徐々に周辺住民から、「アイドリングの音がうるさくて眠れない」「頻繁に出入りするトラックが危ない」といった苦情が入るようになったという。苦情は同社だけでなく、土地を貸している地主の耳にも入るようになり、ついには地主から出て行くように言われてしまった。移転といっても車庫などに一定の広い場所が必要で、簡単には見つからない。そこで、住宅が立ち並ぶことがなく、広い土地が確保できる調整区域に移った。ただ、調整区域は市街化を抑制する区域であるため、開発は原則禁じられている。当然、営業所として認可が下りない。同社も、営業所の認可を受けられないまま営業を続けてきている。国交省の監査体制や罰則の強化が進み、コンプライアンスの徹底が求められる中、同社も違反を改善すべく取り組んできたが、営業所の問題だけはどうしても解決できないでいる。
現在、業界では移動可能なトレーラハウスによる営業所認可の動きもでており、同社長も興味を示してはいるものの、それ以上に「運送会社においては調整区域内で営業することを認めて欲しい」という。「トラックはどうしても地域住民から煙たがれる。肩身の狭い思いをしながら営業している事業者は多いはず」と指摘。「都市部で土地を探すのも難しい。住民からの苦情も少ない調整区域への進出が事業者の一番の得策。不要な開発を抑える条件を設けるなどして、運送事業者の調整区域での営業所設立を認めてほしい。行政は時代にあった対応を行うべきだ」と訴えている。(高田直樹)
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