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ドライバーの時給1775円!? 実勢賃金とのかい離指摘
2012年7月13日
長時間労働に加え運賃下落による賃金状況の悪化で、時間給換算で最低賃金を下回っている運送事業者もあるという。大阪府のある事業者は数年前、建設業の許可を取得し、一般貨物の運送とともに建設業に伴う運送も行っているが、今年4月、国交省発注の公共工事の入札に参加した。国交省は毎年、公共工事の発注について、「公共工事設計労務単価」というものを定め、これに基づき予定価格を定めている。これによると運転者の労務単価は1万4200円(大阪)で、時給換算で1775円となる。一方、同社の一般貨物運送の場合、運転者は時給換算で800円前後。「国の考えている運転者の賃金と実勢の賃金に、かい離がありすぎる。釈然としない」と訴える。
公共工事設計労務単価は、国交省が毎年10月に実施する、公共工事で支払われている労務費の調査に基づいて算出したもので、年度当初からの公共工事の工事費の積算に用いている。単価は基本給、手当、臨時給与(賞与)、実物給与(食事の支給)で構成され、所定労働時間8時間当たりの単価で、時間外や休日、深夜労働についての割増賃金は含まれない。単価表によると鉄筋工、塗装工、溶接工などの職種があり、運転者(一般)もある。これは、道路交通法84条に規定する運転免許(大型、中型、普通免許)を所持し、資材、機材を運搬するため貨物自動車を運転する職種である。
47都道府県別に労務単価が定められており、1万1100円から1万5600円と地域によってばらつきはあるが、大阪府は1万4200円。時給1775円となる。
一方、車両を50台近く保有する同社の今年2月から4月にかけての人件費の実績値によると、15トン車の地場輸送で、午前4時に出発し、宵積みが終わるのは午後11時。労働時間は15時間で時給単価は872円。4トン車は14時間労働で同814円、2トン車は12時間労働で同800円となっている。
同社は「うちは直荷取引で、長距離輸送ではないので、まだましな方。時給単価が最低賃金を下回っているところは珍しくない」と業界の実情を話す。
また、「取引先の大手運送会社の10トンドライバーの給料は、8時間乗務で1日1万4000円。時給換算すると2000円を超える。最近は大手も契約社員や準社員という形で雇用しているが、それでも1000円を軽く超す。中小・零細の大型運転者は1日16─18時間の仕事で1万4000円前後しかない」とし、「国交省は積算としながらも労務単価を定めている。片や運転者の賃金単価を定め、一方では運賃自由化で賃金を野放し状態にするのは矛盾がある」と訴える。
国交省土地・建設産業局建設市場整備課は、公共工事設計労務単価について「公共工事を発注する際の予定価格の算出時に使用しているが、あくまでも算出するための単価。入札では予定価格を下回るのが条件で、労務単価は守るものではない」と話している。(大塚 仁)
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