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違反回避に努力も理解されず 元請け責任問わず社名公表
2017年7月7日
厚生労働省は5月から、過去に労働基準関係法令違反の疑いで送検された企業や各都道府県労働局長などの指導、企業名を公表された企業を、労働基準関係法令違反に係る公表事案として公開している。こうした企業にはブラック企業のイメージを持ってしまうが、法令違反とならないよう努力をしていた企業も少なくない。今回は公表された企業A社に話を聞いた。
A社が公表された理由は労働基準法第32条違反。同社では労働者1人に36協定の延長時間を上回る違法な時間外労働を行わせたとして送検され、リストに掲載された。A社に事実確認を行ったところ、確かに監査が入り、ある企業へ専属で入れていた一人の労働時間が該当することを教えてくれた。しかし、同社では、こうした事態を防ぐため、以前から専属で入っていた事業者に、何度も労働時間削減の協力を申し入れていたという。しかし、聞き入れられることはなかった。同社は該当する元請け事業者との取引をやめた。社長は「我々だけやり玉にあげられ、おかしいと感じている。長時間労働から事故につながっていることもあり、訴訟できるとアドバイスしてくれた方もいたが、もうかかわりたくない」と話している。今回の場合、「元請け事業者が送検の対象か公表対象とならないか」と、厚生労働省労働基準監督課へ問い合わせると、「労働基準法の条文にもあるように、32条などで対象となるのは直接労働を指示している雇用主。元請け事業者を対象としたものではない」としている。また、同監督課は送検事例となるケースについては、「是正勧告などの段階で改善をしていただければ送検とならない」とし、また逆に「判断によっては是正勧告、指導を経ずに送検となる可能性もある」と指摘する。
なお、公表事案は掲載から通常1年の期間をもってHP上から削除されることになるが、1年を待たず削除される可能性もある。同監督課からは公表事案について「すべての事案を載せている訳ではない。管内の順法意識を高めるためという公益性が認められた場合には公表している。順法意識が高まったと判断された場合は1年以内でも公表を削除することもある」とコメントしている。今回のように長時間労働に元請け事業者の発注がかかわっている場合、違法性が問われることがないのか、公正取引委員会に質問すると、「下請法では労働時間に関する規制は対象外。対象となるのは経済的な部分となることが多い」と回答。しかし、同時に「必要とされる労働時間に対し、見合った対価が支払われているかは、法規制の対象となる。高速道路を使用しなければならないケースや残業代が発生するケースにおいて、その分の対価が支払われずにいた場合は問題となる」とも指摘する。
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