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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(285)人材育成について(6)事例(1)
2020年4月6日
・基本の大切さ
法隆寺の修復工事をした宮大工の棟梁は、次のように語っている。「わたしの家は、代々宮大工の棟梁。進学のとき工業へいけと言われると思っていたら、祖父が絶対農業でなければいけないと言う。そして、祖父は、わたしが小さい時からよく、山へ連れていって、自然の中で木がどんな風に生えているか、山の南側の木と北側の木が、どう違うかを見ておくようにと言うのです。また1本1本の木に、それぞれ癖があることも、よく見ておくようにと。建物を長持ちさせようと思ったら、右へ曲がった木や左へ曲がった木をうまく組み合わせて、自然の山のような状態で建てるのがいいと教えてくれました。だから、この辺のことがわかるように農業学校を勧めたんです」
この言葉から学べるのは、人材育成にとっての基本の大切さである。すなわち、本当に人を育てようと思ったら、小手先ではなく、全体をつかまえていく大切さである。宮大工は、何年もガッチリともつ建物をこしらえるプロであるが、木を見てはいけない。「木を買わないで山を買う」との宮大工の口伝があるが、全体を把握して、それぞれの木の特長を生かしていく。それが何年もガッチリとする基本である。
人材育成についても、基本である。基本は何か。それは一人ひとりが自発性を出して、自ら伸びていく力をひき出すことだ。人間は、どういう時にやる気を出すか。それは愛情だ。リーダーの深い愛情を感じれば、部下は自ら伸びんとする力を発揮する。「人の知識を見るのではなく、人そのもの、生き方そのものを見て生かしていく姿勢」。これが、宮大工の「木を買わないで山を買う」の精神に通ずる。 (つづく)
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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