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ブログ・小山 雅敬
第211回:業績給の作り方と留意点
2021年7月13日
【質問】先行きが不透明な時代を乗り切るため、社員の貢献度をより反映した賃金体系に移行したいと考えています。業績給の作り方と留意点について教えてください。
基本給には、年齢給、勤続給、職務給、職能給、役割給、業績給など種々の構成要素がありますが、近時は運送業でも職務給、役割給、業績給を取り入れる会社が増えています。社員の業績貢献度をより処遇に反映したい場合には、業績給のウェイトを高める作り方をすることがあり、中には基本給を業績給だけで構成している会社も見られます。なお、基本給ではなく、諸手当として売上手当や距離手当などを支給している会社もあり、各社各様の賃金体系が存在します。
業績給にはメリットとデメリットがあり、各社の状況に応じて判断する必要があります。メリットは、仕事の結果が直接賃金に反映されるため、大変わかりやすく、仕事に取り組むモチベーションにつながる点です。また、デメリットは賃金の不安定化や担当する仕事により不公平感が生まれやすく、個人主義に陥りやすい点などが挙げられます。業績給の作り方においては、定められた基準があるわけではなく、公正に社員の貢献度を反映できる変動係数で、日常の経営管理において個人別に把握することが可能な係数を選択して使うことになります。売上や粗利、走行距離、積卸し回数、運行回数、配送件数など、納得性がある基準を検討して決定します。状況に応じて拠点別や業態別に異なる業績基準を設けることもあります。ただし、〇トン車一日○○円などと、単に日額を業績給に置き換えたものは認められません。
業績給を設計する際の留意点は、前述した業績給のデメリットをいかに改善するかが重要です。担当する仕事により、割の良い仕事と悪い仕事がある場合、統一した歩合率では不公平感が生じますので、仕事別に歩率を変えるか、または仕事別(荷主別)修正係数を歩率に掛けて修正する方法を検討します。また、飲料や石油、引越など季節波動が大きい業態の場合は、業績の変動幅が大きく、手取り収入(生活資金)が安定しませんので、季節係数を歩率に掛けて修正する方法があります。季節係数は年間売上÷12を基準値として各月の係数を算出することで求めます。また、業績給を含む体系では通常の賃金の6割を保障する必要があり、その旨を賃金規程に明記しなければなりません。保障を8割にして賃金の安定化を図る会社もあります。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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