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ブログ・小山 雅敬
第213回:賞罰規定の作り方
2021年8月10日
【質問】弊社の就業規則には懲戒の記載がありますが、具体的な運用基準が無いため、問題事案が発生する都度、適宜対処しています。懲戒や損害賠償の判断基準を明確にするため、賞罰委員会規定を作成したいのですが、その際の注意点を教えてください。
最近、賞罰委員会規定に関する相談が増えています。その背景には事故発生時の処分に関する運用の見直しがあります。労働基準法で損害賠償の予定が禁止されており、「事故を起こした場合は○円を本人負担とする」など、賠償額の事前取り決めは無効ですが、実際には「保険免責額」など事故時の本人負担額を事前に決めている運送会社も存在し、社内制度を見直す必要があるからです。
「働きやすい職場認証制度」の必須項目にも設定され、その違法性に気付いた会社が新ルールを模索するなかで、賞罰委員会規定の作成を検討しています。そもそも賞罰委員会の設置は任意であり、必ず作らなければならないものではありません。しかし、就業規則に「賞罰委員会において決定する」などの記載があれば、必ず開催の手続きを経なければなりませんので注意が必要です。
賞罰委員会の構成員については法の定めはありませんが、運送会社では役員や管理職及び社員代表者(労働組合)など5〜6人で構成しているケースが多く見られます。賞罰委員会は問題行動や事故が発生した時に本人を呼んで状況を再確認し、本人の弁明を聞き、客観的に公正な処分を検討するために開催します。賞罰委員会には社長や会長など最高決定者は参加しません。経営者の鶴の一声で決定されることを避けるためです。
賞罰委員会で決定した内容は経営者に上申され、経営者がその決定を追認して最終確定されます。懲戒処分の内容は就業規則に記載された制裁基準どおりに行う必要があり、就業規則の第〇条の〇項にあたる事実であるかを確認したうえで、その問題行動が経営に与える影響度合いや損害などを検討します。
運送会社の場合は、主に事故時の処分決定に関わる事案が多く、例えば「事故分担金=事故に伴う実損額×本人の責任度合×本人負担割合」で負担金を定めているケースもあります。予め金額を決めることはできませんが、故意や重大な過失により発生した事故損害金については実損額の一部を本人に負担を求めることが可能です。過度な負担を課すことはできず、おおむね実損額の25%以内にとどめ、適正な上限額(例えば50万円以内など)を設定するケースが多いです。なお、事故時の本人負担は今後なくしていくほうが良いと思います。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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