-
物流ニュース
増える休廃業数 後継者なし、人材不足でゾンビ企業化
2016年8月8日
全国的に企業倒産の減少が進む一方で、地方では休・廃業が深刻化している。休・廃業は負債を伴う倒産に比べて目立たないものの、倒産件数の10倍近いところもあり、地方経済の冷え込みの一つの表れと言ってよいのではないだろうか。運送業では、原油価格の下落の好影響からか、休・廃業の動きは落ち着いているように見えるが、再建の見込みが立たないまま生き残っているゾンビ企業が増えているともいう。罰則強化や労働時間、円安など運送業を取り巻く環境は依然として厳しいと言わざるを得ない。
帝国データバンクの調査によると、2015年の休・廃業件数は2万3914件。倒産件数(8517件)の約3倍にあたり、背景には人口減少による市場縮小のほか、社長の高齢化、人手不足などがある。業種別で見ると、意外にも震災復興やオリンピック関連で需要が高まっているはずの建設関連の休・廃業が目立つ。
また、東京商工リサーチによると2015年の「休廃業・解散」は、社長が70代以上という企業が全体の4割(構成比46.5%)を占めており、円滑な事業承継が急務であることが浮き彫りになっている。2017年には、いわゆる団塊の世代が70代に突入しはじめるため、ますます高齢化が進み、70代以降の経営者の増加に伴う休廃業・解散件数も増えることが予想される。
「景気の影響よりも後継者問題で廃業する事業者が多い。中には40代、50代の経営者が既に次の社長候補を育てている会社もあり、今後は事業承継できる会社と、経営者候補がおらず、手をこまねくしかない会社の二極化が進むのではないか」と話す大阪市内の経営者もいる。「数年前、業界の集まりなどで冗談のように廃業を口にしていた経営者が、本当に辞めてしまうケースもあった。私自身も大きな荷主に突然、仕事を切られるようなことがあったら、休・廃業を考えるかもしれない」とこぼしていた。
景気、後継者不足に続いて休・廃業の要因となり得るのは人材不足だ。前述の調査を業種別に見ると、最も休・廃業件数が多いのが建設業で7640件となった(運輸・通信業は、この10年で最も少ない463件)。1361業種に分けた休・廃業の件数比較では、上位20業種中13業種を建築関連業が占めているが、職人などの人材不足が解消できず、さらに深刻化する可能性がある。
これはトラック運送業にも十分当てはまる傾向ではないだろうか。かつては「手に職をつける」という意味で、技能労働者は憧れを持たれるイメージだったが、今では現場で身体を使う仕事は敬遠されがちだ。
そんな中で、休廃業・解散が3年連続で前年比減少となっている背景には、中小企業金融円滑化法の終了後も引き続き、返済猶予を受けている企業がいまだに多い現状があるようだ。同法は2009年に導入され13年3月まで続いたが、活用した企業は約40万社に及んでいる。
今後、事業者数はますます減ることが予想される。また、昨年度の国勢調査で日本の人口が初のマイナスに転じたように、労働人口は2030年には6773万人(1995年は8726万人)にまで落ち込むことが予想されている。
中小企業は大企業の業績が回復すれば、その恩恵が中小・零細にまで行き渡るという、いわゆるトリクルダウンという仮説があるが、今回の調査結果を見る限り、やはり仮説にすぎない。大手物流企業が過去最高益を更新する一方で、多くの中小・零細の経営は疲弊しきっている。軽油代も、いつまた引き上げとなり経営を圧迫するかは分からない。休・廃業、さらには倒産を防ぐためには、外的要因に左右されない自社努力で乗り切る体制の構築と取り組みが必要だ。この記事へのコメント
関連記事
-
-
-
-
「物流ニュース」の 月別記事一覧
-
「物流ニュース」の新着記事
-
物流メルマガ