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射界
2017年5月29日号 射界
2017年6月1日
「しのぶれど色に出にけりわが恋は ものや思ふと人の問ふらん」とは、平敦盛(平安末期の武将)が詠んだ名句で、小倉百人一首にある。どんなに隠していても私の恋心は顔に出てしまい、誰かに「恋しているんですか」と尋ねられるほど表情に出てしまいますと、恋しい思いを詠み上げている秀句として広く知られる。
▲恋心に限らず、心の内にある思いが隠そうとしても隠しきれず、つい顔に出てしまう。宝くじに当たって大金を手にした人は、ひそかな喜びであっても顔に表れ、周囲の人たちにも喜びの一端を示して分かち合うことで喜びは倍増する。逆に、理不尽な仕打ちを受けて心中穏やかでない人は怒りの渋面になって顏が険しくなる。そんな空気は周囲にも伝わり、そっとしておこうと気を遣う。▲一方で、我が国特有の隣人意識から生まれたともいえる「魚心あれば水心」という表現もある。相手の言い分を暗黙に了解し、求めることを慮って相手の真意に応えようとする姿勢である。最近の出来事で使われて話題になった「忖度」がそうだ。外国人記者との会見で英訳するのに苦労したようで、そのまま「SONTAKU」と、イギリスの新聞に紹介されというから国際語にまでなった。。
▲人の気持ちは微妙に揺れ動くところがあり、言わんとする微妙なニュアンスを、言葉で表現するのは至難のこと。言葉のやり取りだけでなく、その時のジェスチャーも大事な要素となるようだ。目の輝きかたによって「モノをいう」こともある。水がなければ魚は棲めないように、お互いが持ちつ持たれつの良好な関係維持には、表情一つにも気を配る大切さを、この言葉は示唆している。。
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