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ブログ・川﨑 依邦
一人でも入れる労働組合がやってきた(12)目を疑うような要求
2011年9月9日
1人でも入れる労働組合と、そこに駆け込むドライバーとでは考え方にギャップがある。ドライバーは、目先の損失をなんとかしてほしいとの思いが強い。対して労働組合の指導部には目指しているものがある。それは勢力の拡大である。
1人でも入れる労働組合の指導部は、中小運送業の経営者を真の敵とはしていない。中小運送業の経営が苦しいのは荷主や政治に問題があるととらえている。したがって、ケースによっては共闘を持ちかけてくる。共通の真の敵に向かって力を合わせていこうとするのだ。一方、中小運送業の経営者にとっては目を疑うような要求をぶつけてくる。昇給3万5000円、一時金100万円、年収800万円などである。中小運送業の経営者が経営ピンチでヒィヒィ言っていても昇給3万5000円とぶつけてくる。
「経営が苦しいから一律10%賃金カットを実施したのに、この昇給額3万5000円とは何だ! 一時金100万円とは何だ! 今まで賞与を払ったこともないのに無茶苦茶とはこのことだ。年収800万円とはどういうことか。私の年収よりも多いではないか」。経営者が心底びっくりする要求である。
労働組合の指導部にとっては、中小運送業の経営者がびっくりするのは織り込み済みである。労働組合は要求する組織で、大胆に要求していく。そのことで労働組合員の目を覚まさせ、自信をつけさせていく。経営者とは対等であり、堂々と経営者と渡りあっていくことを労働組合員に知らしめていく。一種の労働組合側の戦法である。
運送業における、1人でも入れる労働組合と経営者との間には幾多の労働争議の歴史が横たわっている。中小運送業の経営者は、1人でも入れる労働組合をトコトン嫌悪する。労働者から過大な要求を突き付けられて争議に発展していく歴史である。地方労働委員会や労働審判といった法廷闘争の歴史。労働基準監督署や陸運当局へのたれ込みの歴史。こうした法律を武器として、労働組合が中小運送会社の経営者を攻め立ててくる。場合によっては荷主へ攻め上っていく。「荷主の株主総会に行くぞ」などの脅しがくる。街宣車が会社の周りや荷主のところへ行く。こうした労働争議で会社は疲弊する。売り上げを伸ばすどころではなくなる。かくして経営者はやる気を失う。
労働組合に駆け込んだドライバーは、会社とトコトン争っていこうとまでは考えていない。目先の損失を取り返したい思いが強い。労働組合の指導部とのギャップである。
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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