-
ブログ・川﨑 依邦
一人でも入れる労働組合がやってきた(20)労働組合と水面下で交渉
2011年11月4日
「通告書」「是正勧告書」「運輸局の改善指示書」と、トリプルでA社に降りかかってきている。
その内容には共通項がある。労働時間の問題である。時間外手当の未払い問題である。とりわけ運輸局の改善指示書は重い。行政処分が控えているからである。車両停止か、ひょっとすると運送業の免許停止の恐れすらある。労働基準監督署の是正勧告書も重い。2年間に遡って時間外手当の未払いを払えとなると、経営は完全に行き詰る。「通告書」の5人分(労働組合員)のみならず、全社員分なので金額も大きい。5人分で1500万円、あとの25人分で7500万円、計9000万円である。
トリプルで襲いかかっている背後には「1人でも入れる労働組合」がある。A社長はここにきて、いつまでも「ノー」とつっぱねることは無理であると、つくづく思い知る。思い切って「1人でも入れる労働組合」の大物氏に相談することとする。大物氏が「うちは中小企業をつぶすことはしないよ」と述べていたのを思い出したからである。
水面下で交渉することとし、一流ホテルの喫茶店で大物氏と向き合う。
A社長「このままいくと会社をつぶすしかないところまできてしまいました。どうすればいいでしょうか」
大物氏「それは経営者の責任ですよ」
A社長「確かにその通りです。しかしこのまま対決しても会社にとってもよくありません。裁判をしたら弁護士費用もかかります」
大物氏「要するに通告書にある通りの金額をまず払って下さいよ」
A社長「それが払えたらあなたと会うこともありませんよ」
大物氏「労働基準監督署や運輸局も来ているでしょう。待ったなしですよ。それに本当にA社長が話をつけたいのなら、解決金として5人分の時間外手当未払い分1500万円プラス1500万円の計3000万円を出せば話に乗りますよ」
A社長「とても払える金額ではありません」第1回の交渉は物別れになった。次回の交渉日を決めて、それまでじっくりと考えることにする。労働基準監督官には労働組合と交渉していることを伝え、2年間分の時間外手当の支払いについては待ってもらうことにする。労働組合と話がつけば、その方向に基づいて是正報告することとする。
A社長は法律のプレッシャーの重さにいまさらながらおののく。しかし、おののくばかりでは先に進まない。逃げずに立ち向かうことをA社長は決意する。
-
-
-
-
筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
「ブログ・川﨑 依邦」の 月別記事一覧
-
「ブログ・川﨑 依邦」の新着記事
-
物流メルマガ