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ブログ・川﨑 依邦
一人でも入れる労働組合がやってきた(39)経営改革に踏み切る
2012年3月30日
1人でも入れる労働組合が結成されてからA社長は気の休まる日々がない。
「どうしたらいいであろうか」。思い悩む日々である。「売り上げをどのようにして上げていくか。荷主交渉をどうするか」。このような前向きなことを考える余裕がない。思えば、労働組合が結成されてから営業活動はゼロである。既存荷主のところにも顔を出していない。「それどころではない」というのが社長の心境である。社内改革も手付かずである。一人ひとりのドライバーへの働きかけもピタリとやめている。ドライバーへの働きかけとは、燃費効率向上のためのエコドライブの指導、車両管理の徹底、マナーやしつけの徹底、5S指導のことである。「下手に働きかけて不当労働行為と言われても…」。不当労働行為とは経営者が組合潰しのためにドライバーに声をかけ働きかけることである。
A社長はふと足元を見つめ直す。果たして前向きに経営をやっていただろうか。営業活動はゼロ、社内改革はゼロでは、とても経営をやっていたとは言えない。確かに慣れないことで労働組合に振り回されている。「これではいけない」。A社長は経営改革を決意する。
創業時を振り返る。ないない尽くしであった。金も信用も人もいない。頼れるのは自分のみ、あるのは1日24時間と体力・気力のみ。2トントラック1台からのスタートである。死に物狂いで働いてきた。眠気を振り払うためにタバコを指に挟んで火をつける。火の熱さでハッと目が覚める。「働く」ということしか頭になかった。あの時の苦労を思えば、乗り越えられないことはない。
労働組合の結成は、いわば黒船である。黒船とは1851年のペリー来航、浦賀沖に軍艦4隻が突如姿を現して、徳川幕府に開国を迫ったことをいう。「たった4杯で夜も眠れず」と当時の庶民は徳川幕府を揶揄したものである。黒船によって長い鎖国から明治維新へと国は大変革する。「そうだ。労働組合は黒船だ」とA社長は膝を打つ。このままの会社で良い訳がない。経営改革なくして生き残れる訳がない。ピンチをチャンスに変えていくことだ。
A社の現状分析をする。現状分析は、財務・労務・荷主・資金繰り・コンプライアンスの面から行う。角度を変えていえばコミュニケーション・5S・マナー・しつけ・組織図等のことである。その上で経営課題を整理し、「経営方針書」にまとめていく。「経営方針書」の作成は黒船に立ち向かっていく錦の御旗である。
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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