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ブログ・川﨑 依邦
一人でも入れる労働組合がやってきた(47)金を欲しがるドライバー
2012年6月1日
A社を襲った「一人でも入れる労働組合」の顛末は、結局、金の力によって解決する。5人いた分会員はゼロとなる。
ドライバー気質というものがある。ズバリ言えば愛社精神というよりも「金」に執着する。「1円でも多く?金?が欲しい。できたら楽をして稼ぎたい」。ところが現実は厳しい。給料はこのところ上がらない。経営者からすると給料は上げたくても無理である。赤字スレスレ、もしくは赤字そのもので、資金繰りに切羽詰まっている。とてもドライバーの給料を上げていくほどの余裕がない。その上、労働実態は楽して稼げるほど甘くない。時間給に置き換えてみると、時給800から1000円のドライバーは珍しくない。ドライバーは金のことで不満を抱えている。ところが不満の持って行きどころがない。配車担当者に文句を言っても取り合ってくれない。社長に直言しても「そんなに不満なら会社を辞めろ」の一喝である。ドライバーは不満が高じてくる。配車担当者や社長に怒りすら覚えてくる。「会社は信用ならない。俺を騙している」「この給料でやっておれるか。生活できない」。
こうしたドライバーの不満や怒りの受け皿のひとつが「一人でも入れる労働組合」である。受け皿である労働組合は、必然的に経済(金)問題に取り組むこととなる。いわゆる時間外手当の未払いや賃金カットの撤回、事故のペナルティ金額を会社が取るのをやめろなど、金さえあれば解決できる問題ばかりである。
ところが中小運送会社の経営の現実が横たわる。大企業と比して中小企業は余裕がないのである。コミュニケーションをじっくりとる職場風土になっていない。時間と金の余裕がない。そこで「金」の要求を法の力で迫られると、どうしても中小企業の経営者はうろたえるしかないのである。「払いたくても払えない。組合の要求通りにすると会社が赤字になってしまう」。これが中小企業の経営者の本音である。
一方、労働組合は労働基準法を錦の御旗として攻めてくる。日本国憲法をバックにしてくる。金で解決する世界となる。本来、労働組合は労働者の権利を守り、拡大する使命がある。圧制に抗していく使命がある。ところがドライバーからすると、現実は「金が欲しい」という不満と怒りをバネにしていくことが労働組合の活動となっている。理屈としては、資本家の圧制に抗し、搾取に対して立ち向かっていくのが労働組合の役割となる。実際は資本家と言っても中小企業の経営者である。圧制も搾取もしていない。
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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