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ブログ・小山 雅敬
第136回:同一労働同一賃金の動向と運送業への影響
2018年7月31日
【質問】「同一労働同一賃金」が法制化される予定と聞きましたが、内容が良くわかりません。我々運送会社には、どのような影響があるのでしょうか?
正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を是正しようとする法制化の動きは、すでに5年以上も前から進められてきました。2012年に改正された労働契約法(20条)では、正規と非正規の社員間で「職務内容、当該職務の内容および配置の変更の範囲、その他の事情を考慮して不合理と認められる労働条件の相違」を禁じています。これと同趣旨の内容は2014年に改正されたパート労働法(8条)でも規定されています。
政府は昨年、同一労働同一賃金の法制化の方針を打ち出し、昨年末に「同一労働同一賃金ガイドライン案(平成28年12月20日)」を発表しました。「同一労働同一賃金」は従来、不合理な待遇差を問題としてきましたが、ガイドラインでは、さらに踏み込んで「同一の支給をしなければならない」などと明記しています。中身を見ると、基本給や手当、賞与、出張旅費や福利厚生、教育訓練に至るまで、細かく項目を挙げて、「問題とならない例」と「問題となる例」を例示しています。しかし、例示の内容を見ると、実際に起こりうる様々なケースに対して、どう判断すればよいかが不明確であり、これをもって賃金体系などを早急に見直すという動きまでにはならないでしょう。
現時点ではガイドライン案であり、今後の審議を経て中身がより明確になった上で実際に法制化された後に、初めて実務対応が見えてくるものと思います。ただし、現段階で賃金改定を進めている運送会社も多いと思いますので、今注意しておくべき事項について挙げておきたいと思います。①賃金規程中の「基本給」の決め方に「年齢、勤続、学歴」などの属性基準を設けている会社の場合、同じ属性の社員については正規・非正規を問わず同一賃金にする必要が生じます。特に、実態とは無関係に規定の雛形を取り入れている会社が陥り易い注意点です。②食事手当や特殊勤務手当など多様な手当を支給している会社は、それが本当に必要な手当なのかを見直し、手当の改廃を検討すべきでしょう。③賞与の決定などに評価制度を設けていない会社は非正規社員から「同一の貢献度である」と主張されたときに、その根拠を示せるか再度検証しておく必要があります。評価制度は必須となるでしょう。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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