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ブログ・花房 陵
6.IFRS固有の計算書とは
2010年10月1日
IFRSによって大きく変わるのは、従来のPLで計算された利益とBSで評価されてきた資産や原価の計算方法である。IFRS基準では次のような大きな変更が想定されている。
特に売上げの認識要件が変更になる。
5つの認識要件から従来の倉庫出荷データをそのまま売上げデータに計上する方式は認められなくなる。5つの条件は当然といえばあたりまえの考え方で、日本の商習慣が異なっていたと言われても反論の余地がない。特に多くの業界で行われてきた、期末の押し込み販売による売上げの膨張は、昨今の四半期決算によって有名無実化してきた経緯からすると、今回のIFRS方式での検収基準は納得できる範囲に含まれる。
同様に商品在庫や土地不動産などの資産の評価に時価会計の流れが踏襲されて、取得原価である簿価を排除することも当然の流れであろう。
また、工場設備や物流施設なども中期経営計画の段階では、3~5年程度で経済環境が激変してきた経緯からして、設備の更改や撤収による原状回復経費を事前に見積もっておき、資産除去費用を負債計上することも時代の流れに従った方式ともいえる。
これらを通じて、従来の利益の概念が大きく変わってくる。
・包括利益
企業の利益とはPLで計算された(売り掛け)売上げマイナス(買い掛け)経費で算定されてきたが、日本の商習慣では売り掛け回収と買い掛け支払いに実は恣意性が含まれていた。だから、PLで計算された利益と財務会計での利益には操作性が含まれている、と指摘されても反論できる余地がなかった。
IFRSではこのような恣意性を排除するために、事業利益のほかに金融収支やその他売上げなどに含まれる一切の利益勘定をBSでいう、資産の純増=資本の増加によって測定しようというのである。資本=資本金+試算増だから、これこそどこにも計算や恣意性は含まれず、公正妥当な表現と解釈になる。
・公正価値
昔取得した不動産を時流にあわせて再開発する動きが活発であるが、その際の不動産価格は簿価を下回る際には減損会計を利用するようになった。だから、その他の資産も時価で改めて評価しなおすという流れである。
・PL、BSはなくなる?
IFRSではPL、BSの代わりに「包括利益計算書」と「財政状態計算書」が主流となり、付属資料としてキャッシュフロー計算書が続くことになる。
経理担当者としては頭の痛いシステム改良を求められるわけだが、日本の商習慣を世界の基準に合わせようといういわば、標準化の流れに異論はないはずだ。
われらも世界標準の意向を正しく理解したいものである。
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筆者紹介
花房 陵
イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント
コンサル経験22年、物流から見た営業や生産、経営までをテーマに 28業種200社以上を経験。業種特有の物流技術を応用して、物流 の進化を進めたい。情報化と国際、生産や営業を越えたハイブリッド 物流がこれからのテーマ。ITと物流が一体となる日まで続けます。 -
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