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ブログ・小山 雅敬
第148回:ドライバー任せの出庫時刻をどう改善すればよいか
2019年1月22日
【質問】わが社のドライバーは早朝、予定より2時間早く出庫し、到着地で待機する傾向があります。本人は「道路が渋滞しないうちに到着したい」と言い、会社としても本人の意向に任せている状態です。最近、拘束時間が問題になっているので、改善する必要性を感じていますが、どのように対処すればよいでしょうか?
このご質問は各地で講演する際、セミナー中によく受ける質問です。このケースで、まず確認すべきことは、運行管理者がドライバーに対して明確に出庫時刻を指示しているか、ということです。当然ながら出庫時刻の指示は必要です。しかし、適正な出庫時刻を指示せず、ドライバー任せにしている会社が多く見られます。本人が決めた時間に合わせて点呼を行っている状況です。多くのドライバーは、ゆとりをもって早めに出庫し、時間に遅れることなく仕事をこなしたいと思っています。これは習性であり、出庫時刻をドライバー任せにすれば、拘束時間が長期化するのは必然です。
次に、ドライバー自身が拘束時間を含むコンプライアンスに対する認識を、どの程度持っているか、ということを確認しなければなりません。ベテランドライバーほど労働時間短縮に対する意識は、さほど高くなく、早めに出庫して、確実に仕事をこなすプロ意識の方が上回る傾向が見られます。そのため全員に改善基準告示の内容と会社の勤務ルールを繰り返し周知することが重要です。拘束時間の順守度を評価表の評価項目に入れて賃金などの処遇に反映することで実効性を高める方法もあります。労働時間の適正化は管理者とドライバー本人が強く意識しないと改善は困難です。
そして第三に、担当業務の職務内容に何か問題がないか、を確認する必要があります。例えば、ドライバーが荷主から早めに到着するよう直接言われていたケースもあります。また、積み下ろしの順番待ちが早出をする理由になっていることもあります。それらが原因の場合は荷主と改善策を話し合う必要があるでしょう。運賃や待機時間を含む取引条件の改善交渉は、人手不足を背景にして今が最もやりやすい時期になっています。
なお、賃金に関して補足すると、任意の出庫時刻を黙認している場合、当然その時刻から賃金が発生する労働時間にあたります。また、到着地で次の作業時刻が決まっている場合には、到着後から作業時刻までの間、休憩を指示することができますが、作業時刻が決まっていない場合は全て待機時間となり、賃金が発生します。いずれにしてもドライバーの出庫時刻は会社主体で管理することが非常に重要です。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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