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仕事と組織は、マニュアルで動かそう(内海正人・著、クロスメディア・パブリッシング)
2009年9月10日
「マニュアル化された接客は心が感じられない、画一的」などといった物言いで、何かと「悪者扱い」されることが多い「マニュアル」。しかし、これを上手く活用することが、組織のパフォーマンスを上げるのに役立つ―と説くのが内海正人氏の著書「仕事と組織は、マニュアルで動かそう」だ。
「『マニュアル』という言葉はマイナスのイメージでとらえられがち。しかし、仕事を進める上での『基本中の基本』を押さえているという意味では、なくてはならないもの。製造業でもサービス業でも、品質を保つための最低限のことが書かれている『教科書』と思ってもらえれば良いだろう。たとえば、教習所で運転の手順を習えば、自動車の構造を詳しく知らなくとも運転することができる。それと同じこと」
内海氏
社労士の資格を有し、また人事コンサルタントとして、大手から中小まで多くの企業を担当してきた同氏。「マニュアル」というと「チェーン店」や「大手企業」のものと考えられることも多いが、同氏は、「2人以上の人間が介在する場合は必要」と中小規模の企業にもその整備の必要性を訴える。
「創業者が一人でやっているうちは良いが、外注にお願いしたり、パート・アルバイトを雇ったりしたら、『何をどこまでお願いするのか』という区分けを明確にする必要がある」
創業時でなくとも話は同じだ。マニュアルを作る第一歩として取り組むべきは「責任の明確化」と「業務の分担」。
「たとえばいま2人で分担してやっている作業も、もしかしたらどちらか1人に寄せたほうが効率的かもしれない。もちろん効率化が全てとは言わないが、『業務の棚卸』を行うことで、人材も含めた経営資源を有効に活用することが重要」
マニュアルの手順に沿って業務を行えば、入社したばかりの新人であっても、一定のパフォーマンスが発揮できるようになる―など、同著では「マニュアルをつくるメリット」として合計16の項目を挙げている。
「マニュアルをベースに組織を動かせるようになれば、経営者やマネージャー陣は安心して仕事を部下に任せられるようになり、『会社の将来』について考える時間を増やすことが可能になる。この『戦略を考える時間』を確保できないことには、その社長の器以上に組織を成長させることはできない」
マニュアル化の手順は同著に詳しく書かれているが、大事なのは「利用目的」(誰のために、何のためにマニュアルが存在しているのか)、「評価基準」(その作業をどう達成すれば「完了」なのか)をきちんと示すこと。この考え方をさらに一歩推し進めれば、人事考課に活用することも可能となる。「マニュアル化=ノウハウ化」ととらえれば、技術継承を実現する「会社の資産」をつくることにもつながる。
もちろん、「こう動けば良い」という、世に言われる「いわゆるマニュアル」になってしまっては元も子もない。そこで重要になるのが「会社の方向性をしっかりと示すこと」だという。
「社員みんなが同じ方向を見た上で、受け持つ仕事やその結果の意味を一人ひとりが理解すること。その上で、ツールとしてマニュアルを使いこなすことが大切」
▼「仕事と組織は、マニュアルで動かそう」内海正人・著、クロスメディア・パブリッシング、1450円(税別)
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