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  • ブログ・川﨑 依邦

    経営再生物語(271)人材育成についてーA社の事例(2)

    2019年12月9日

     
     
     

     「社長さん、本当に信頼できる幹部を育成しないといけません。そのためには何をすべきだと思いますか」

     

     社長「うちの幹部は、育成がいのない者ばかりです。○△などは、勤務中にふらっと喫茶店にいくのがクセみたいな男だし、営業の○□は、パチンコが好きで荷主先訪問とは名ばかりでパチンコをしていますよ。どいつもこいつもカスですよ。それより先生に頼んでいるのは、いかにして儲けを大きくするかです。そこのところをしっかりアドバイスして下さいよ」

     私「儲けるためにこそ人材育成が大切なのですよ。幹部にヒヤリングした感想ですが、諦めムードがあります。より強い成長欲、向上心を表に出していません。人間ですから、生きている限り必ず持っているはずですが、それが表れていません。これでは企業の活力は弱まりますよ。社長、一人ひとりを信頼して下さいよ。一人ひとりがより活力を出せば、企業は成長するのです。現状では、力いっぱいの全力を尽くしていません。だから、企業目標を明示して、チャレンジ精神をおこさせていくのです」

     社長「人材育成して辞められたら元も子もない。とにかく、わしの言う通りイエス、イエスといってやってくれたら、それでいい。わしは社員に頭を使うことは求めない。頭はわしだ。彼らは手足でいい。営業員に売り上げの2%を成果給として渡すという給与制度をとった時も、散々だった。彼らは利益を無視してダンピングして売り上げを上げたか、会社はあやうくつぶれるところだったよ。彼らの程度はそんなもんで、人材育成なんてとんでもない。イエス、イエスで充分で、気に入らなければ、いつでも辞めてよろしい。なにしろ、わしの会社だ」

     人材育成は社長の思想、人生観、価値観の反映である。たしかにA社の社長は25歳で独立して一から苦労してここまで会社を育ててきたが、そのプロセスで人には苦労してきたにちがいない。

     その苦労が言わせるので、決して本心の中の本心で「カスや」と言っているのではないと信ずる。「わしの会社」であるからこそ「カスや」と言っても本当は社員がかわいいのである。

     だから、私がうっかり「そうですね、おたくの幹部はレベルが低い」とでも言えば、不機嫌になるのは間違いない。ここが人間の心の不思議なところである。

     「社長、だからこそ人材育成が大切なのですよ。イエス、イエスの社員ばかりでは〝わしの会社〟の将来も危ういですよ。できる社員を辞めさせない会社にしていく必要があります。ひとつ全社目標をつくって人材育成に本腰をいれましょう」    (つづく)

     
     
     
     

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  • 筆者紹介

    川﨑 依邦

    経営コンサルタント
    早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
    63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
    中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
    グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。

    株式会社シーエムオー
    http://www.cmo-co.com

     
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