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ブログ・野口 誠一
第308回:経営者の人間性を蝕む放蕩
2011年6月30日
中小企業は、経営者の成長に比例して成長していく。大企業は時と金をたっぷりかけて経営者をつくっていけるが、中小企業にその余裕はない。とすれば、中小企業の社長は自ら器量を磨きながら、真の経営者になっていくしかない。
にもかかわらず私は放蕩に溺れ、成長どころかどんどん後退し、儲かって儲かって仕方のない会社を、潰すように潰すように仕向けていったと言っていい。たかが放蕩というには、あまりにも高い代償である。
放蕩の怖いところは、経営者としての成長が止まるだけでなく、その人間性が病んでいくことにある。たとえば、創業して5年間ぐらいは、いくら社長未満の私でも一生懸命だった。会社を支えてくれるイヌ、ネコ、クマなどのぬいぐるみがかわいくて仕方がなかった。
ところが放蕩の海に溺れるや、とたんに愛情がわかなくなってしまった。自社製品に愛情の持てないような社長は、経営者失格というより人間性喪失と言うべきであろう。
真の経営者なら、自社製品がユーザーにどう受け止められているか、気になって気になって仕方がないはずである。たとえイヌ1匹、クマ1頭にしろ、それがアメリカ向けならアメリカまで追いかけていくはずである。そして。アメリカの子どもたちがわが社のイヌ、ネコ、クマをどのようにかわいがってくれているかいないか、知らずにはいられないはずである。それが市場調査というものであろう。
市場調査は経営の根幹である。「アメリカの子どもたちはどんな動物が好きか」「ぬいぐるみのほかにどんな玩具が身のまわりにあるか」「親はどのぐらい子どもに玩具を買い与えているか」、そのあたりを自分の目で確かめ、次の展開につなげていくのが真の経営者というものであろう。しかし、私はそのことごとくを怠った。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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