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ブログ・野口 誠一
第309回:錆びついた経営センス
2011年7月7日
市場の嗜好やパイの大きさを知らずして、「つくれば売れる」「売れるからつくる」というのは場当たり経営にすぎない。私がまさにそれだった。
イヌやクマなどの単純なぬいぐるみでも、つくる片っ端からアメリカが輸入していく。私は人員を動員してつくりまくった。そして儲けまくった。しかし、場当たり経営はその計画性と展望のなさによって、いつかは行き詰まる。
どんな商品にもライフ・サイクルがあり、それは玩具とて同様である。日本中の若い女性の腕にぶら下がった「ダッコちゃん」といえども、ブームが去ればたちまち忘れられていった。しかし、私は自分のイヌ、ネコ、クマは永遠であり、アメリカも永遠に輸入してくれるものと信じて疑わなかった。というより、疑うヒマもないくらい放蕩に明け暮れていたと言っていい。
最大の顧客・アメリカへの視察も市場リサーチもしていなかった。ぬいぐるみの次の展望ももちろんない。こうした場当たり経営者の終着駅は、倒産以外にあり得ない。日米繊維摩擦があろうとなかろうと、オイル・ショックがあろうとなかろうと、私は倒産を免れなかったはずである。むしろ22年間も続いたことのほうが不思議と言っていい。
しかし、来るべきものは来る。昭和52年、ついにアメリカからの受注がストップした。あわてて国内市場への転換を試みたが、コネなし、ツテなしで新規参入できるほど、市場は甘くない。むろん、事業転換も考えた。が、思いつきで新規事業が展開できるほど、経営は甘くない。
そのとき私は47歳。何よりも困ったのは、十数年間にわたる放蕩生活で経営センスがすっかり錆びつき、思考も身体もなまりきっていたことである。放蕩生活に明け暮れたツケと言っていい。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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