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ブログ・野口 誠一
第358回:願ってもない交通整理
2012年4月30日
Mさんは手形のジャンプと銀行の返済延長、金利減免でひと息ついた。が、次はいよいよ経営改善策の実行である。これが難関であることはMさんに限らない。私は八起会へ相談にくる多くの経営者に、Mさん同様のアドバイスや提案を行うが、納得して帰っても、いざ実行の段になると、銀行や取引先に頭を下げるのはいや、ましてや社員にはなおいや、となってしまうようである。それで倒産を免れることができるなら、頭などいくら下げてもかまわないと思うのだが、それができない経営者のなんと多いことか。
なかには私の改善策に対して「厳しすぎる」と反発する経営者もいる。が、それは私が厳しいのではなく、そこまでしなければならないほど、経営の現状が厳しいということなのだが、なかなか理解してもらえない。しまいには「私の会社ではなく、あなたの会社なのですよ」と当たり前のことまで言わなければならない場面もある。
その点、Mさんは非常に素直かつ律儀で、私の提案した「改善策」を忠実に実行してくれた。心を鬼にして4人の人員をリストラし、残った社員(パートを含む)に倒産の瀬戸際にあることを説き、一律15%の給与カット、健康保険、厚生年金、厚生年金基金の自己負担化、さらに退職金のストップを頭を下げて頼み込んだ。もちろん「黒字が定着するまで」という条件を提示したうえでのことである。
しかし、これで無事におさまったわけではない。やはり不満分子が現れ、リストラ要員4人のほかに社員2人、パート1人が会社を辞めていった。その結果、Mさんを含めて16人だった陣容が、一気に9人にまで減ってしまった。が、逆にこれが願ってもない交通整理となり、いいことずくめの好結果を生んでいく。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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