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ブログ・野口 誠一
第353回:勇気問われる正攻法
2012年4月16日
さて、Mさんの経営数字を前に、私と顧問の公認会計士が考えたことは、それほど特別なことではない。
というより、特別な方法をひねり出す余地がないほど、Mさんの数字は「倒産寸前」を語っていたのである。月々の売り上げが4000万円しかないのに、しかも粗利率が13%と低いのに、毎月3000万円以上の手形を決済していくことなど不可能と言っていい。とすれば、取引先に手形のジャンプ、繰り延べを頼むしかない。と同時に、メイン・バンクに返済の延長と金利の減免を願うしかない。
その猶予(モラトリアム)の間に経営を立て直し、黒字転換を図っていく。そのためには人員のリストラはもちろん、経営全般を洗い直し、諸経費の節減と営業を強化し、売り上げを伸ばしていかなければならない。
この結論はきわめて常道に沿ったものである。それだけ、Mさんの数字は小手先の改善策でどうこうなる域を超えていた。が、常道は正攻法であるだけに、勇気と器量が問われる。いままで対等に取引してきた相手に、潰れそうだから手形をジャンプしてくれ、と頼むのは多大の勇気を要する。また、銀行に返済の延長や金利の減免を願うのも、信用を失うのではないか、もう貸してくれなくなるのではないか、ヘタをすると回収を迫られるのではないかと、怖いし恐ろしい。
それだけに、この正攻法は誰も実行したがらない。八起会へ相談に来る経営者の大半はそれである。なかには「それができないから相談に来ているんです」などと言う経営者もいる。言うは易く行うに難いのが、この正攻法である。
案の定、Mさんも最初は尻込みした。が、Mさんの数字は正攻法しかないことを語っていた。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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