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ブログ・野口 誠一
第356回:「仏」呼ぶ勇気と誠意
2012年4月16日
私の提案にMさんは目を白黒させたが、私はまるで姑の小言のように細かく、あらゆる経費コントロールをMさんに求めた。その節減項目21、その節減額3200万円(年間)、率にして40%の経費カットである。
次は、いよいよこの経営改善策を持って取引先、金融機関まわりである。いまでも感心するが、Mさんは勇(ゆう)を鼓(こ)してその折衝に当たった。その時点でMさんは37社に合わせて1億6723万円の手形を発行していたが、大どころは9社でおよそ8000万円、全体の半分を占める。その9社さえ猶予してくれればなんとかなる。Mさんはその1社1社に頭を下げてまわり、倒産だけは免れたいことを、ここをしのげばなんとかなることを、改善方針7か条と改善策21項目を示しながら訴えた。
その結果、9社中4社が1─2年の猶予(手形のジャンプ)に応じてくれ、3社が期日ごとの書き換えに応じてくれ、少しずつ返済していくことになった。しかし残る2社は、自分のところも苦しいからと応じてもらえなかったが、その額面は合わせて700万円と低く、なんとかクリア可能な金額だった。
この9社まわりでMさんは人の情けに出会ったという。1200万円の手形を発行していたF社を訪ねたところ、「あなたの会社がそんなことになっていたとは知りませんでした。手形はあなたの会社が立ち直るまで待ちましょう。よく正直に相談してくれました。500万円ばかり用意します。当座のしのぎに使ってください」と、手形を繰り延べてくれたうえに当座の資金まで貸してくれたという。
のちにMさんは私に「鬼に会うべきところを、仏に会いました」と語ってくれたが、私はMさんの勇気と誠意が「仏」を呼んだと思っている。この記事へのコメント
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筆者紹介
野口 誠一
八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。 わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。
平成28年2月18日 東京都内の病院にて逝去、享年85歳。
HP:https://yaokikai.com -
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