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ブログ・名南コンサルティングネットワーク
第17回:下請法に基づく適正取引の重要性
2014年2月17日
今回は、運送業において最も重要である運賃の決定に関する問題を取り上げてみたいと思います。
下請法では、親事業者が発注にあたって下請け代金の額を決定する際に、発注した内容と同種または類似の給付の内容に対し、通常支払われる対価に比べて著しく低い額を不当に定めることを禁止しており(下請法第4条第1項第5号)、これを一般に「買いたたきの禁止」といいます。親事業者がその地位を利用して、下請け事業者の利益を損ない、経営を圧迫することを防止するための規定です。
以前、本稿でもご紹介しました「下請け代金の減額」(下請法第4条第1項第3号)が、いったん決定された下請け代金を事後に減じることを規制するものであるのに対し、「買いたたき」は、発注時点での代金決定に関する規制になります。問題は、禁止される「買いたたき」に該当するかどうかを、どうやって判断するかです。
まず、基準となるのが「通常支払われる対価」です。これは、同種または類似の取引について実際に行われている価格、すなわち市場価格をいいます。ですから、その時点の経済情勢や業界動向によっても変わります。
そして、「買いたたき」に該当するかどうかは、(1)下請け代金の額の決定に当たり、下請け事業者と十分な協議がなされたかどうか(対価の決定方法)(2)対価が差別的であるか(対価の決定内容)(3)通常支払われる対価と下請け代金の差額(市場価格との乖離状況)(4)当該取引に必要な原価などの価格動向、などの具体的な要素を総合的に勘案して判断されます。
「買いたたき」に該当する事例としては、(1)大量に発注することを前提とした単価で決定したにも関わらず、実際には少量の発注しかしなかった場合(2)従前の年間運送契約に定めのなかった積み下ろし作業が追加されたため下請け事業者が追加見積もりを提出したにも関わらず、更新時に価格を据え置いた場合(3)下請け事業者と協議することなく、親事業者の目標額をもって著しく低い下請け代金の額を決定した場合、などが挙げられます。
「買いたたき禁止」は、親事業者が留意すべき規定であることはもちろんですが、該当するかどうかは市場価格にも影響されますので、下請け事業者自身も企業努力によって市場価格に対応できるようにしておく必要もあります。
(小谷祥・名南コンサルティングネットワーク http://www.meinan.net/)この記事へのコメント
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筆者紹介
名南コンサルティングネットワーク
東海地区トップクラスの経営コンサルタント集団。税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、不動産鑑定士、中小企業診断士など様々な資格を活かし、経営コンサルティングだけでなく労務管理、税務会計、各種登記・許認可申請、資産運用助言、ISO認証取得支援、マネジメントシステム構築支援など中小・中堅企業の経営をトータルにサポート。「運送業支援チーム」を結成し、業界特有のトラブル対応やトラブルの未然防止策などの経営支援に力を入れている。
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