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ブログ・小山 雅敬
第87回:強みや魅力を公表しなければ求職者に伝わらない
2016年8月11日
【質問】現在、人手不足の対策に頭を痛めています。時々、ホームページ経由で採用面接に来る人がいる程度で、全く人が足りません。当社の賃金は高い方だと思います。退職金制度も整備しました。他に何をすればよいのか教えてください。
私が訪問した運送会社の例を挙げます。その会社は大手食品メーカーの配送を中心に受託し、毎年安定した業況を維持していました。相談内容は人手不足対策でした。4トン車を中心に60台超、大型車も10台程度保有しており、地元では中堅規模に位置する会社ですが、とにかく募集をかけても人が来ないという悩みでした。
既存社員の賃金額を尋ねると、その会社の賃金水準は周辺の同業他社より平均月額2万円ほど高い水準でした。賞与も毎年支給しています。無理な長時間労働もなく、労働条件としてはかなり競争力のある会社でした。さらに、今年に入って退職金制度を整備するなど、社員の定着を促進する方針で着々と整備を進めていました。「人を採用するには労働条件を改善する必要があると思っています」と大変素晴らしい考え方の経営者でした。
ところが、私が「御社のホームページを拝見したところ、その優位性について、どこにも書かれていないようですが」と尋ねると、その社長は「労働条件の項目には『賞与、退職金制度有り』と書いていますが」との回答でした。現在、中小運送会社で賞与を毎年支給しているところは稀です。退職金についても中退共制度を活用して少額を積み立てている会社が多く、30年勤続して300万円支給されれば良い方だと思います。それが中小企業の実態です。その会社に面接に来る人は全員ホームページを見て来ているとのこと。それならば、もっと会社の制度の優位性をアピールすべきです。「具体的に制度の優位性を伝えたほうが良いですよ。『社員インタビュー』の中で伝えても良いでしょう」と伝えました。
その会社はホームページのスマホ版も作っていませんでした。今、求職者はスマホで会社を検索しています。求職者に最も身近なツールをまだ活用していない実態に驚きました。その会社には賃金以外にも多くの優位性が見つかりました。車両設備の優位性、社員教育の取り組み、財務内容の優位性など、外から見えない優位性が多く見つかったのです。どんなに良い点があっても、それを外部に伝えない限り、求職者には全くわかりません。社内整備と社外へのアピールは同時に行う必要があります。
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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