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ブログ・馬場 栄
第119回:雇用契約の始まり
2017年11月16日
雇用契約はいつからスタートするのでしょう。この質問には、社長からも実にいろいろな答えが返ってきます。「雇用契約書を取り交わした日かな?」「ドライバーが入社した日だと思う」「口頭で合意したときだろう」などなど。自信をもってはっきりと答えられる人は少ないかもしれません。
法律の定めでは、雇用契約とは「労働者が会社に労働力を提供することを約束し、会社側が労働力に対して報酬の支払いを約束すること」と定めがあります。約束の方法は、書面はもちろん、口頭も有効になるので、例えば社長が「明日から月30万円で働いてくれ」と言って、社員が合意すれば、その時点で雇用契約は成立します。
また、よくある例として「来月から働いてくれ」という、いわゆる内定についてもほぼ同様の考え方になります。内定のことを正式には「就労始期付解約権留保付労働契約」と言い、語尾に労働契約とついていることからも内定とはいえ、あくまで「労働契約」なのです。
入社前であれば採用取り消しはすぐに出来ると勘違いしている方もいるかもしれませんが、大きな勘違いです。内定を出しているということは、労働契約が成立していることには変わりがありません。採用を取り消すには「客観的」「合理的」「社会通念上相当」な理由が必要で、一般の解雇と同じくらい難易度が高く、対象者と綿密な話し合い等を行わなければいけません。社長が一方的に今回の話をなかったことにするのはもってのほかです。
なおかつ、採用取り消しの事由を具体的に就業規則に定めておかないと、実際に交渉を行うことすら難しくなります。定める項目としては、例えば「免許の取得条件が異なったとき」「入社日までに健康状態が変わったとき」「経営環境が悪化、事業の見直しなどが行われたとき」など具体的に明示する必要があります。就業規則に採用取り消しのルールを決めているか今一度、自社の就業規則を確認してみてはいかがでしょうか。
運送業界の人手不足も手伝って、応募者の採用を十分に検討せず、採用を急いでしまう会社が増えていると感じられます。そして結果として後悔する会社も増えています。以前、記事でも書きましたが、面接実施の際に確認書の取り付けや会社のルールを事前に伝えることなど面接の段階から慎重な対応を行う必要があります。採用決定前に慎重に判断することで、採用決定後のお互いのミスマッチを防ぐことが重要なのです。
(保険サービスシステム株式会社・社会保険労務士・馬場栄) -
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筆者紹介
馬場 栄
保険サービスシステム株式会社 社会保険労務士
年間約300社の経営者の相談・アドバイスを行っている。中小企業の就業規則や残業代など、幅広い労務管理のアドバイスに高い評価を得ている。 -
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