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ブログ・馬場 栄
第142回:給与変更事例(2)大型、長距離車両
2018年9月27日
前回は「4トン・地場運行車両」に絞って話しましたが、今回は、比較的長距離を走る「大型・長距離車両」についてお話をしていきます。車種によって理想的な給与の支払い方法が大きく変わってきます。
さて、地場運行車両と同様に給与変更時の留意点、①コンプライアンス、②経営者の理念・思い、③経営合理性、④公平性・モチベーション、⑤ドライバー確保の五つの視点で長距離運行車両の給与変更を検討してみます。
まず、最大の問題点ですが、コンプライアンス面の対策として基本給、諸手当を見直すと同時に、定額残業代60時間分の設定を検討します。現行の給与では残業代が未払いとなっています。経営者は能率給で残業代を支給していると考えていますが、否認される可能性が高いでしょう。残業代単価は基本給を含む所定内給与の大きさで決まりますが、現在の同社の給与では残業単価が高くなってしまいます。
そこで基本給日額を3000円とすると共に「理念や公平性」を検討し、「プロドライバー手当」を新設します。「プロドライバー手当」は「大型免許・無事故・デジタコ操作・デジタコ評点・日報記入等」を評価するものです。経営者の問題意識としてデジタコを活用できていない、拘束時間が長いといった問題がありましたが、手当化することで燃費向上等ドライバー意識改革を図ることを目指します。
定額時間外手当の導入は残業代単価対策およびドライバー求人対策として、求人票の毎月決まって支払う給与として位置づけることが可能です。歩合給に関しては神奈川から中国、九州まで1運行(出庫から帰庫まで)3~4日運行していますが、1運行単位で歩合給設定する考え方はモチベーション等を考慮し、変更せず、単価の微修正のみ実施します。歩合給に関する残業代は法定通り(歩合給/総労働時間×0.25×残業時間数)計算し支給します。歩合給に関する法定計算のメリットを合理的に活用することは運送会社・長距離運行車輌の給与設計に必須と考えられます。長距離運行で残業時間が多く、基本給や諸手当を設定するのが難しい場合にはオール歩合給の採用も検討すべきです。
最低賃金法との関連ですが1026円(基本給/所定労働時間数433円)+(歩合給/総労働時間数593円)となり神奈川県最低賃金(平成29年5月現在)930円を上回り、10月の改定にも対応できる見込みです。
なお、前回の地場運行車両と同様に、この考え方はあくまでも変更の方向性であり、実際の導入の際には社員への丁寧な説明と手続きが必要となります。
(保険サービスシステム株式会社・社会保険労務士・馬場栄) -
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筆者紹介
馬場 栄
保険サービスシステム株式会社 社会保険労務士
年間約300社の経営者の相談・アドバイスを行っている。中小企業の就業規則や残業代など、幅広い労務管理のアドバイスに高い評価を得ている。 -
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