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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(282)人材育成について(5)事例(1)
2020年3月9日
・働く姿勢と環境づくり
人材育成は、どのような方針で臨むべきであろうか。中小企業の経営指導の実践を通じて、私は働く姿勢と環境づくりがポイントではないかと考えている。
「最近の若い新入社員は給与や休日といった労働条件の不満ばかり言って、どうしようもないよ」「きつく叱るとプイとふくれて〝辞めます〟の一言だからね。本当に使いづらいタイプが増えたよ」「反応にとぼしくてね。ウンもスンも言わないし、こちらから問いかけない限り返事もしないし、不気味だね」……管理職、経営者の嘆きである。
A社は人員50人の中小運送会社である。地道に本業に取り組んでいる。A社の人材育成の方針は〝働く姿勢づくり〟である。A社に入ってくる若いドライバーの新人は、現場では大卒は少なく、高卒か、高校中退が主力である。人手不足の中で、自力でプロドライバーを育成する考えで採用している。
この新人タイプが、A社にとっては悩みの種である。あいさつも満足にできない者、遅刻を繰り返す者、服装や身だしなみがぱっとしない者…。働く以前の問題が多い。パチンコにこってしまってサラ金に走り、ある日突然いなくなったり、夜を徹して遊ぶので月曜日によく休んだりする者といった具合である。本も満足に読む習慣がないので字を知らない。
「新人の人材育成は、どうしたらいいですか」と、A社の社長は私に問いかけた。A社では人手不足のため、プロドライバーの採用条件はいい。給料は初任給25万円。それでも定着はかんばしくなく、7人が1年経って4人しか残っていない。しかも入社5年以内に70%が辞めてしまうとのことで、社長の悩みは深い。
人材育成のポイントとして働く姿勢づくりをアドバイスした。具体的には職場の中であいさつの徹底。そして生き方についての勉強会を開いた。生き方の勉強会とは、何のために働くのか、一人ひとりの胸のうちを語ってもらい、仕事の中での喜びを語り合うものである。仕事の中での喜びは、今までできなかったことができるようになったことや、荷主さんに褒められたこと、運行管理者の資格がとれたとき、仕事が段取りよくいっているとき…。
月1回、ときにはコップ酒を酌み交わしながら継続している。徐々に効果が出始めている。対象は入社5年未満である。この1年間の定着率がよくなった。1年間で辞めたのは1人で、それも家庭の都合である。
(つづく)
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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