• ブログ・川﨑 依邦

    経営再生物語(298)人材育成について(10)事例(2)

    2020年7月27日

     
     
     

     Bさんは入社10年の若手営業社員だ。伸び悩みが続いていた。Bさんの上司は色々と手を尽くした。家にも呼んで食事をしたり、親身になってやる気を引き出そうとした。Bさんは上司の親切には感謝していたが、仕事で張り切るという風でもなかった。上司は営業社員の能力アップ研修へも、年に何回もBさんをおくった。Bさんの営業成績は下がる一方で、後輩にも追い抜かれだした。社内の誰もが「ノロマのBさん」と内心決めつけだした。Bさんは32歳。独身貴族でおっとりしていた。

     

     Bさんは実家へ帰省した。Bさんの母曰く、「元気でやっているのかい」。Bさん「まあぼちぼちよ」。母「実は、お父さんが定年になって家の生活が苦しくなってね。家のローンも残っているし、まだ末の弟が大学生だろう。学資が大変でね」……母「お前も32歳になるんだろう。早く嫁さんでも見つけて私を安心させてよ」。実家からの帰りの車中でBさんはしんみりと考え込んだ。「自分の給料では嫁さんをもらっても苦しい。営業成績も悪いのでボーナスも同期では最低だ。親に小遣いをもらうどころじゃないなあ」

     Bさんの心に変化が生じた。Bさんは自ら志願して新規開拓専従班に入った。6か月で結果を出せないと元の職場には戻れない。たいていは会社を辞めていく。その代わり、いい成績をあげるとボーナスも増えるし、その後の昇進のはずみがつく。Bさんは、朝は7時に出社し、外をかけずり回って夜10時、11時まで働いた。このエネルギーは実家の母の言葉がきっかけで生まれてきたのだ。Bさんのおっとりした心に危機感が灯ったのだ。頼るものは自分しかない。自分がしっかりせずしてどうするのだ。あえて厳しい環境に飛び込んで、自分を変えようとしたのだ。Bさんは伸び悩みを脱出した。    (つづく)

     
     
     
     
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  • 筆者紹介

    川﨑 依邦

    経営コンサルタント
    早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
    63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
    中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
    グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。

    株式会社シーエムオー
    http://www.cmo-co.com

     
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