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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(372)リーダーシップについて(7)―1
2022年4月4日
セルフコントロールとは自己制御のことで、自分で自分を律していく力である。
このセルフコントロールがきっちりできるのはリーダーのリーダーたる所以である。自己制御力が不十分だと、好き放題になって歯止めを失ってしまい、ついには身を滅ぼすことになる。リーダーはトップであるので、権力を持っている。自分がしっかりしないとだれも助けたり代わったりはできない。
その意味で今回は2人のリーダーを比較して、セルフコントロールの大切さについて考えてみたい。
A社は、中堅の不動産会社である。創業40年じっくりと社業をのばしてきたが、5年前二代目リーダーになってから波乱の幕があいた。
この二代目リーダーは、大学を卒業してから、大手不動産会社に就職した。いわば修行である。5年間の修行予定であったが、3年でA社に帰ってきた。大手不動産会社でのサラリーマン生活が合わなかったわけだ。
二代目意識が強すぎて、わがままな態度が周囲から嫌われた。遅刻は月3〜4回、注意するとすぐふくれるし、いわばハレモノ社員である。親父の会社の援助で大きな仕事は時々まとめてくるが、それを大いに鼻にかけるので評判をおとす。そしてA社に帰ってきた。
父親である社長は、息子としょっちゅう喧嘩の毎日となった。二代目は、交際費を湯水の如く使う。月200万円。その交際活動の内容は、二代目の人脈づくり中心で、直接の仕事には関係ない。
父親「あそび回るのもいいかげんにせんか。社員がじっと見てるんだ」
二代目「いいじゃないか。将来の仕事につながる人脈活動だ」
3年間は喧嘩の日々で、ついに二代目はめったに会社にも顔を見せなくなった。そして、5年前に父親が急逝した。古参幹部には先代の妻、二代目からすると母が土下座して「どうか、息子を社長にして下さい」と頼みこんだ。こうでもしないと二代目の信用は地に堕ちているので、誰も納得しない。
緊急に開かれた幹部会で、母は息子への盲愛から、涙を流して一世一代のパフォーマンスを行った訳だ。大株主である母の意向は、無視できない。かくして二代目リーダーが誕生した。
二代目リーダーは好き放題のふるまいに暴走した。またたく間に借金は何十倍にもふくれあがった。決算数字は、表面上は倍々ゲームで増収増益となった。周囲がちやほやし「積極的ですばらしいですね。正に若武者ですなあ」とほめたたえる。特に銀行をはじめとする金融機関がすりよってくる。
二代目リーダーは連日連夜、料亭での会議、高級クラブと出没し、交際費も年間1億円近くにのぼった。ハワイやニューヨーク、ロスアンゼルスと年に何回も海外旅行する。海外でのおみやげもケタはずれに買ってくる…。一回海外出張すると1000万単位で使ってくる…。
今、A社は倒産スレスレをさまよっている。
(つづく)
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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