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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(379)リーダーシップについて(9)―2
2022年6月6日
受注型の会社であるので、経営体質は受け身である。だから社長にとっては、組織もいらない、幹部もいらない、戦略も必要ない、ただ得意先についていくのみでいいわけである。夫に従う妻の役割みたいなものでリーダーシップの発揮は必要なく、発揮しないのでかえって平和が保たれる。妻がアレコレうるさいと、夫がやりにくいのである。
ここまではこのスタイルが成功したが、これからは組織をつくり、経営目標を確立していかねば、この会社の将来は危うい。一人ひとりの社員が、社長に頼れないので自然と自発性を引き出してきたが、これからは、より大きなやる気がいるのだ。
今ある仕事をこなしていく自発性から、会社をより大きく成長させていこうとするものへの転換である。
それは今までの何もしないというリーダーシップから、旗を振り、ラッパを吹くリーダーシップへと変化させ、一人ひとりのより大きなやる気を引き出すようにせねばならない。
企業の成長段階にふさわしい自発性の引き出し方がある。この自発性というコトバが、企業経営活性化の核心である。
山種証券元会長の山崎富治氏が著作『ほうれんそうが会社を強くする』の中で、次のように述べている。「自分で判断をくだすのではなく、人の判断のままに動くということは、考えてみればこんなラクなことはない。自分の頭を使えば使うほど万一失敗に終わった時など、どうしても自分を苦しめることになる。
その点、上の言うとおりにしか動かなければどんな大きな失敗があっても、『どうせあいつが考えたことなのだから』と失敗の責任を他に押し付けてしまうことができる。
これでは積極的に仕事に取り組む意欲など湧いてこないだろうし、つねに問題意識を持ってアンテナを張りめぐらし、何かことがあれば、すぐに報告なり、連絡や相談をするということもほとんど期待できないだろう。
植物を育てるときでも、水をやることは必要なのだが、あまりに水をやりすぎるとかえって根を腐らせてしまうことがある。それと同時に上の人間があまりにも細かいところにまで口を出し、下の人間をそれこそ手とり足とり世話をしていると、結局は人材も育たなければ、〝ほうれんそう〟も悪くなって組織をダメにしてしまうことがあるのである」
この運送会社のケースのようにトップが頼りなく、一人ひとりが自分で考えて仕事をやらないとどうしようもないという状況が、かえって成長の力になった例もある。もちろんこれからは、トップの役割、リーダーシップのあり方も変革しないと、これ以上の成長や経営の活性化は望むべくもない。
(つづく)
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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