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ブログ・川﨑 依邦
経営再生物語(382)リーダーシップについて(10)―2
2022年6月27日
創業6年目のことである。大きな落とし穴があった。私が社長と知り合ったのは、10年目の頃である。社長は大きな失敗をしていた。B氏に1億円の使い込みをされていて、にっちもさっちもいかなくなっていた。
B氏は社長に信用があることをいいことに、役員になった頃から不正をし始めていた。会社を食い物にしだしたのだ。
手口としては、経費を水増しすることである。ウソの交際費、架空名での人件費、高速券を大量に買ってあとで換金するとか、切手代と称してチョロまかすなどして月に100万、発覚するまでの4年間で5000万にのぼった。あとの5000万は、勝手に会社の定期預金を取り崩し、しめて1億円である。
発覚のきっかけはちょっとしたことで、社長がよく飲みに行くスナックの女の子からである。B氏は飲み屋の請求書を実際より多く書いてもらって、当然領収書をもらうが、その際実際との差額をバックしてもらっていたのである。女の子がB氏との仲が上手くいかなくなって、社長に告発したわけである。
寝耳に水とはこのことである。社長から見るB氏はまじめで、女を作るようなプレイボーイには見えなかった。自分に対して一度として反抗的態度をとったこともないし、扱いやすい男であった。
この交際費水増しが突破口となって全容が把握できた。社長が私に経営診断を依頼し、その結果、次々と不正が発覚したのだ。この社長は、人を見る目がなかった。B氏は、実は妻子と別居していた。幹部の中でも社長に忠告する者もいたが、聞く耳を持たなかった。
その幹部は、B氏と飲みに行って、店の女の子に1万円のチップをはずむ現場を見ていた。昼間のイメージとえらい違うので心に残っていたわけだ。社長は、人物評価を間違えた。
こうしたケースは、中小企業ではよくあることだ。信じた幹部に根こそぎ得意先を持っていかれて泡を食うとか、この人こそと思って手間暇かけてようやく一人前になったと思ったら逃げられてしまうとか、人を見抜く力の不足で泣きをみる。
人を見抜く力は、鍛えていかねばならない。B氏のような例ではチェックの仕組みを作ることであり、予期せぬ有能社員の独立では、一期一会の精神で備えを怠らぬことだ。
一期一会とは、会うが別れの始まりで、いつかは別れがくると悟る精神であり、備えとは、その際に慌てふためかないように、その人に対する、依存率を落として、後継者を育てることだ。そのバックとしてリーダーたるものは人間に対する洞察力を深めていくことだ。 (つづく)
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筆者紹介
川﨑 依邦
経営コンサルタント
早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。
株式会社シーエムオー
http://www.cmo-co.com -
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