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  • ブログ・川﨑 依邦

    経営再生物語(233)経営革新支援法〈事例A〉

    2019年2月18日

     
     
     

    〈A社の事例〉

     

     A社は車両台数100台の中堅運送会社である。ここ2、3年は荷主からの物流合理化の大波を受けて運送収入が低迷し、収益力が弱まってきている。そこでA社のトップは中小企業経営革新支援法を活用して経営革新を進めることを決定した。

     Ⅰ 「経営革新計画」の内容

     ①経営革新の主目標

     入庫→在庫管理→流通加工→ピッキング→配送という一連の物流システムを担う共同物流センターの建設、運営が経営革新の目標である。

     この目標は「役務の新たな提供方式の導入その他の新たな事業活動」に該当する。A社長としては、荷主の物流合理化需要に対して共同物流システムの構築で対応することにした。

     運賃のとらえ方を、個建て方式(1ケースいくらという料金体系)に切り換える。荷主の観点からいえば、これは物流費を変動費として位置付けることになる。この目標を達成するためには新たな荷主開拓が必要となる。荷主開拓目標は20社である。加えて、荷主開拓を担う人材育成が必要となる。かつ共同物流システムというサービス商品の情報システムの高度化が必須となる。

     ②経営革新の数値目標

     数値目標としては、この法律では付加価値の伸び率を3年で9%、4年12%、5年15%以上とすることになっている。A社では3年で30%を目標としている。

     経営革新支援法では、付加価値は人件費、減価償却費、営業利益の合計数値としてとらえられる。

     人を増やし、設備投資をし、かつ営業利益を上げることが付加価値である。人減らしとか事業の縮小といったリストラは前提にしていない。A社長は、この考えが大いに気に入っている。資金繰りさえうまく回転すれば、当面は営業利益が赤字でも将来を見据えた目先にとらわれない経営が可能となる。

     ③経営計画および資金計画

     表1の項目について数字を入れる。A社の経営革新は3か年である。付加価値の伸び率は30%である。添付資料としては直近3期間の決算書と定款が要る。共同物流センターの設備投資額は3億円である。

     Ⅱ A社長の決意

     2年前と比べて売り上げは17%減少し、営業利益は50%減となっている。営業利益率では20%減である。全体の営業利益率の2%しかなく、活路は荷主開拓による売り上げのアップしかない。

     ところが、人材ナシ、資金ナシである。そこで経営革新支援法を弾みとしてチャレンジすることを決意した。経営革新計画を作成することでチャレンジ内容を整理し、まとめることができる。

     自己資金の1億円は不採算部門の営業所を閉鎖して、その社有地の売却で捻出することにした。経営革新計画が承認されれば、進行状況が都道府県担当局の審査でチェックされる。承認されれば後戻りはできない。生き残り、成長していくためには展望を切り拓くことが求められている。展望の具体的表現が経営革新計画である。3億円の設備投資をして、3年後には30%の付加価値を上げる。

     A社長の胸にふつふつと闘志が湧いてくる。希望を感じる。「やるしかない。必ずできる」——A社長の決意である。

     
     
     
     

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  • 筆者紹介

    川﨑 依邦

    経営コンサルタント
    早稲田大学卒業後、民間会社にて人事・経理部門を担当し、昭和58年からコンサルタント業界に入る。
    63年に独立開業し、現在では『物流経営研究会』を組織。
    中小企業診断士、社会保険労務士、日本物流学会正会員などの資格保有。
    グループ会社に、輸送業務・人材サービス業務・物流コンサルティング業務事業を中心に事業展開する、プレジャーがある。

    株式会社シーエムオー
    http://www.cmo-co.com

     
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