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ブログ・小山 雅敬
第178回:ドライバーの出庫時刻が必要以上に早い
2020年3月17日
【質問】働き方改革に沿って拘束時間の短縮化を図っていますが、弊社のドライバーは早朝、必要以上に早く出庫するため、拘束時間長期化の一因になっています。「道路が混まないうちに着きたい」と主張するドライバーの気持ちも理解でき、強く注意することができません。他社では、どのような対策を講じていますか。
「ドライバーの出庫が必要以上に早いので何とかしたい」。この質問はコンサルティングの現場で運送業の経営者からよく受ける質問です。運行管理者が出庫時刻を指示し、指示通りに出庫させることが基本ですが、ドライバーの習性として、「道路がすいているうちに目的地に着きたい」「荷の順番待ちを短くするため早く出たい」との気持ちが強く働くため、よく生じる現象です。
関与先の運送会社で、運行管理者がドライバーの出庫時刻を強く注意したところ、出庫時刻の自由度を奪われたドライバーが反発して退社したケースがありました。この早すぎる出庫の傾向は、特に賃金体系が固定給で残業単価が高い会社では、顕著に表れています。早く出庫すれば、それだけ賃金が増えるからです。早く出庫すると、通常の作業開始時刻よりも早く到着地に着くので、運行管理者が休憩指示を出せば、作業開始時刻までの時間が休憩時間となりますが、肝心の拘束時間は変わりません。拘束時間を短縮するためには出庫・帰庫の時刻を是正する以外の方法はありません。この問題を解決するためには、拘束時間を短縮したほうがドライバーにメリットがある仕組みを導入すると効果があります。
実例として、弊社の顧問先運送会社の一社は、賃金体系を見直して、月間拘束時間293時間を超えていない場合のみ、手当を支給する仕組を導入しました。293時間を順守できた月は5000円を支給するという仕組みです。賃金に法令順守の取組度合を反映することで、その会社の個人別拘束時間データは別会社のように一変しました。新制度移行後、数か月で293時間越えのドライバーが激減しました。
ドライバーは、わかりやすい目標が示されると、それに向けて自ら考え、行動を変えます。ただし、賃金に反映しないとうまく機能しません。ドライバーに具体的なメリットを提示することが成功のポイントになります。
人は賃金だけで動くものではないですが、コンサルティングの現場では、会社を是正していく手段として、賃金制度は極めて効果的です。拘束時間の削減は経営者の意識改革や努力だけでは進まず、ドライバーの意識改革が必要です。労使が同一の目標に向かうための具体的な仕組みづくりが必要になります。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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