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ブログ・小山 雅敬
第252回:運送会社の危ない賃金体系ワースト3とは
2023年6月16日
【質問】近頃、運送業界で頻繁に賃金トラブルが発生していると聞いています。運送会社における危ない賃金体系のワースト3を教えてください。
2020年4月に賃金請求権の消滅時効が2年から3年に延長され、2023年4月で遡及期間が丸3年になったこともあり、最近残業代請求トラブルが各地で急増中です。
さらに近年は働き方改革に伴う各種法改正が連続して施行されており、社内体制の整備が追いついていない運送会社が多数存在します。
今、運送会社の現場で見る最も危ない賃金体系のワースト3は次のとおりです。
該当する会社があれば、トラブルに直面する前に早急に是正する必要があります。
ワースト①は固定残業代制度を導入して労働時間管理を行っていない会社です。
例えば、固定残業代10万円/月を支払い、十分な残業代を支払っていると認識し、労働時間管理を行わず、「万一監査等で指摘された場合は不足分だけ支払えば良いだろう」と考えている会社が、今最も危ない会社です。
労働時間を管理していない、または実態に比べて過大な固定残業代はそれ自体が否認され、残業代ゼロになる可能性があるからです。その場合、未払い賃金を3年間遡及されると1000万円超の請求も珍しくありません。
次にワースト②は、賃金総額を歩合計算で決定し、割増賃金を別に支払わず、形式上だけ基本給と割増賃金に割り振りしている会社です。
例えば、賃金総額を「運賃収入—コスト(燃料代・高速代等)」の計算で決定し、賃金台帳や給与明細上では基本給(最低賃金)と割増賃金(時間外手当、深夜手当等)に割り振って計上している会社です。
時間外労働をいくらしても賃金総額が変わらない賃金体系であり、最高裁判決で違法と判断されています。多額の請求を受けるリスクが高く、早急な改善が必要です。
最後にワースト③は、運行ごとにみなし時間を決めて、その時間で労働時間管理を行っている会社です。
実労働時間ではなく、会社が決めたみなし時間をそのまま使って賃金台帳上に計上し、賃金計算を行っている会社は適正な労働時間管理を行っていないと判断されます。
その他にも、㋐時間外手当の算定基礎額相違(例:基本給だけで残業計算しているなど)㋑労働時間の把握が不適切(例:残業時間30分未満切り捨てなど)㋒割増賃金無し(例:日給1万円(残業込み)など)等、危ない支払い方が多数見られます。トラブル回避に向けた対策を急ぐ必要があります。
(コヤマ経営代表 小山雅敬/中小企業診断士・日本物流学会会員)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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