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ブログ・小山 雅敬
第161回:配車の不満を訴える運転職への対応
2019年7月23日
【質問】最近、社内で複数のドライバーが配車に対する不満を訴えています。「楽に稼げる仕事が一部の社員に偏っており、自分は割に合わない仕事ばかりさせられている」という不満です。このような不満に対して会社は、どう対応していけばよいでしょうか。
運転職の配車に対する不満は、多かれ少なかれ大抵の運送会社で聞かれます。通常の運送会社は、一社で複数荷主の多様な作業を請け負うため、「他の社員に比べて自分の仕事は割に合わないのでは」と考える社員が出やすいのです。特に実運賃をもとに売り上げ歩合を計算している会社では、収受運賃により報酬が異なるため、その傾向が強くなります。この不満に対する対策として、「歩合を一切やめて完全固定給に変えてしまおう」と賃金を改定する会社もあります。
しかし、そうすると個々の効率が賃金に反映されなくなり、「どうせ時間で決まるのだから頑張っても仕方がない」という空気が蔓延し、残業時間稼ぎに走る社員が出てきます。賃金改定の失敗で、職場が非効率化した会社から、元の歩合体系に戻したいとの相談を受けることがよくあります。それでは配車に対する不満に、どう対処すればよいでしょうか。
ある会社の経営者は毎月、前月の配車実績と全員の個人別給与をチェックし、配車に偏りが見られるときは、配車係を全員呼んで強く注意をしています。数百台を保有する大規模の会社ですが、その経営者は「配車の偏りをチェックすることが、社長の最も重要な仕事だ」と考えています。また一般的に売り上げ歩合を導入する場合は、給与計算上で実運賃を使わず、社内標準運賃を使って計算する方法がよく採用されます。同様の仕事は同じ運賃として給与計算するやり方です。給与計算に実運賃を使っている会社は見直すとよいでしょう。
ところで、配車に対する不満は、単に運賃の違いだけでなく、付帯作業の負荷や労働時間、休日の違いなど様々な要素を含んでいます。全員が、ほぼ同じ仕事をしている会社は問題ないですが、多様な仕事を請け負う会社ほど不満が発生してきます。この対策は、仕事をローテーションで回して、一部の社員だけがきつい仕事を続けることがないように配慮することになります。配車係は「そこまで考えていたら仕事が回らない」と怒るかもしれませんが、それが無理であれば業績給の設定方法を配慮するしかありません。売り上げ、距離、荷役作業、拘束時間など仕事別に考慮した設定方法に変えて、業務の違いを仕事給で処遇することです。この方法は多くの運送会社が取り組んでいます。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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