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ブログ・小山 雅敬
第162回:社員に新賃金体系を説明するときの注意点
2019年8月6日
【質問】弊社では、人材確保対策や労働時間抑制に伴う減収防止対策として、現状の賃金体系を見直し、新しい賃金体系に移行することにしました。新賃金体系を社員に説明するときの注意点を教えてください。
このところ、賃金体系を見直す運送会社が増えています。背景には労働市場の激変と労働時間管理の強化、および最低賃金や採用コスト上昇に伴う人件費の膨張があります。
具体的な改定理由は、①良い人材を確保するため②労働時間抑制に伴う賃金の減収を防止するため③最低賃金の上昇に向けた対策④生産性の向上を目指した対策、など色々です。
改定の動機は各社各様ですが、どのような賃金体系の変更であっても、社員の生活に大きく影響する事柄であり、社員に説明する際は、わかりやすく丁寧に説明することが大切です。たとえ賃上げを伴う人材確保を狙いとする賃金改定であっても、会社があいまいな説明を行うと、社員は疑心暗鬼になり、「会社がまた何か企んでいるのでは」と警戒します。社員の努力を正しく反映するための見直しであれば、その目的を丁寧に説明し、納得を得る必要があります。
賃金改定において社員が最も気にする点は、「自分の給与は賃金体系の変更により、上がるのか、下がるのか」という点です。合理的な賃金体系改定であっても、一方的な不利益変更は許されませんので、改定後の賃金体系で計算した場合に、万一、賃金が下がる見込みの社員が一部存在する場合は、調整補填するなどの経過措置を講じる必要があります。賃金改定の説明時には、「なぜ、この賃金改定が必要なのか」をまず説明します。運送業界を取り巻く経営環境や自社の状況、今後会社はどの方向に進もうとしているのか、などを説明します。さらに新賃金体系の概要とともに改定前後の変更箇所をわかりやすく説明します。
次に、賃金体系変更に伴う激変緩和措置や経過措置の内容を説明します。運送会社では各社員の勤務時間がまちまちなため、説明会は現場ごとに分けて実施するか、小規模な会社では、社長が直接社員と一対一で面談して説明するケースが多いと思います。説明は、現場管理者に任せるのではなく、改定内容を理解している経営者または総務担当役員などが行うべきです。社員説明時に質問を受けた場合は、すぐに社内で共有し、早めに回答することが大切です。説明により社員の納得が得られたら、賃金体系改定同意書に署名をしてもらいます。同意を文書で確認しておくことは極めて大事なことです。
(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)
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筆者紹介
小山 雅敬
コヤマ経営
昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。 -
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